北都将軍
お迎えの馬車で登城。通常はボディーチェック等を経てしばらく待たされて謁見の間に通されるらしいが、車寄せに王姉が自ら出迎え、そのまま中庭に案内されてお茶会が始まった。
「そんな疑いの目で詮索し続けていたら体力が保ちませんよ、3日間あるんですから。」
「し、失礼致しました、え、えっと、その・・・」
目立たないようにチラ見していたつもりでいた昴は、王姉の言葉に硬直した。
「ご心配なく。貴方が想像している面倒な事をお願いしようと思っているの、一緒にお茶を楽しんで頂きたいのですが、心此処に有らずのご様子ですね、殿方同士でお仕事のお話の方が良かったかしら?」
「あ、そう言う事でしたら是非!」
王姉の指示で現れた、使者のオジサマの案内で城の中に入っていった。
中庭でのお茶会は、王姉と三将の妻達、梅枝・桜花・菊花がプレアデスメンバーを饗す。
「護衛の依頼の筈ですが?」
圭織が不思議そうに尋ねると、
「辺境伯の屋敷でお茶会が開かれます。周囲の領から夫人が招かれており、北部の結束を、高める事が目的という名目ですが、丸ごと人質にされるかもしれません。」
「なるほど!そこにご令嬢に化けて潜入するのですね!」
「ええ、私達もいきなり貴族夫人になって苦労しましたから、お手伝い出来そうと思いまして。」
礼儀作法に付いては、貴族に紛れての護衛を想定して一応は学習している。真理は家庭教師を務めていた程なので勿論完璧。裕子、圭織、ひとみは、トーラスで数回実戦を経験済みなのでなんとか様になっている。美貴は真理の指導で、一通りの知識は頭に入っている程度。まぁ、見かけの年齢を考慮すると、『お嬢ちゃんエライね!』で済みそう。とは言え、王姉も参加する位なので上位の貴族が集まる筈、見様見真似で、自分達の知識を確認した。
城の中では、北都将軍と呼ばれる王姉の夫を中心に、北の三将と昴で、北部国境の状況を確認した。王弟宮で把握している情報と、昴が集めた情報を照合し、精度の向上や不明点の撲滅を狙う。
「そうか、やはり『東』か。」
将軍は苦虫を噛み潰したように眉間に皺を寄せた。
話が見えていない昴には、歴史の解説が必要だった。
『東』と言うのは、王都の東、海岸にある街で、今の王家のルーツの土地、獅子公爵が治める。国を纏めるにあたり、地理的にもっと中心の方が、端々迄目が届き易い事と、開拓可能な平地が沢山有る、今の王都に移った。今でも王家ゆかりの者が暮らしているが、政治、経済、軍事、どれをとってもただの地方都市。今の王都に移ってから統一を果たしたので、正しい表現では無いが、古都の愛称で呼ばれる事も有る。
王家との姻戚関係も濃く、先王の早逝した王弟が健在であれば、北都を任され、許嫁だった獅子家の令嬢が妃になっていた筈。
現在、『北の三将』と呼ばれているが、先代迄は獅子家も含む『北の四家』として北都を支えていた。武に長けた三家と、政治に長けた獅子家でバランスが取れていたが、先々代辺りから、政治よりも金儲けに注力する様になり、獅子家の令嬢が妃となれば、妃の兄と言う立場と、財力で北を牛耳っていたかもしれない。将軍は、金儲け主義の獅子家を経済的なブレインに集中させ、政治は自らが行った。裏方に回った獅子家、まだ治安が悪かった時代、なんとか平和を守った三家と評価に差がついて『三将』と、王弟宮の側近から外されたような評価となり、獅子家は将軍を良く思って居ない。
更には、東部では獅子家こそが、本来の王家との考えも定着している。王家が現在の国土を統一する前、小国だった獅子家。勢力拡大に伴い、現在の王都に拠点を移すが、当時の家長は先祖から受け継いだ土地に拘り、東部に残り、実質次男が統一を果す。
次男は兄を王にと考えていたが、手薄になっていた東部を攻められ落城。その後に王となる弟が直ぐに奪還したが、家長とその家族は亡き者となった。
嫁いでいた娘が、夫と共に実家に戻ったのが現在の獅子家のルーツ。本家説を唱えてもある意味間違いでもない。現王家は、親戚として友好関係を保っていると考えているし、獅子家の殆どもそう思っているが、一部に冷遇と感じる者がいて、水面下で王位を狙う者もいる。王家の三男に娘を嫁がせて北都を我が物とし、王都への足掛かりを考えていた者は、同じ様に次男にも娘を嫁がせているが、王都の参謀が、その野望を懸念し、もう引退してもおかしくない王叔父を西都に留めている。
辺境伯の異変は隠居していた先々代に孫程の歳の後妻が来てから。息子に任せていた領の管理に口出しする様になって対立、息子である当時の辺境伯が突然死、その息子が継いでいるが実質、先々代が仕切っている。後妻の妹が現在の辺境伯の許嫁となり、その実家の獅子家が、勢力を強めている。
「その許嫁のお披露目会があり、北部の御婦人方が招かれていまして、我が妻も参加するのです。」
「それで、参加者に紛れての護衛ですね!やっと話が見えてきました!それであれば、ドレスが必要物資という事も納得です。」
昴が事情を把握した所で、辺境伯と北の国について深掘り、先々代の辺境伯が豹変したきっかけの後妻が鍵であるとの見解で意思統一して作戦会議を終えた。




