酒の力再び
その後は、特に何も起こらずに下船。預けた荷物を船外で受取る為の列に並んだ。当然、ターゲットの少し後を狙い、まぁ理想的なポジションをゲットした。ひとみはポーチからホイッスルを出して吹く。結構な勢いだったが、音は鳴らなかった。
何かの魔具だろうと昴は気にしていなかったが、頭上に鳥が数羽旋回していた。ターゲット達の荷馬車が出てくると、何か小さな粒を荷台に放り込む。それから、自分達の番を待って台車に乗せた箱を受け取る。そのまま、人目のつかない所迄ゴロゴロ押して、ポーチに収納。荷物はポーチで事足りるが、荷受けの列に並ぶ事が目的。ホイッスルで呼んだ鳥達が、小粒が放り込まれた荷馬車を追跡している様なので、これもミッションクリアだろう。
夕方迄時間を潰す。商店街をブラついたり、ギルドを覗いて依頼の状況を確認したり。
「普通の宿だったら、今からでも泊まれるよね?」
「あら?わたしだけ差別ですの?」
「あ、いや、そ、そうだね、別に急いでいる訳でもないもんね。」
明日の魔物駆除の依頼を請けつつ、受付嬢から、街やギルドの情報を貰い、先ずは、オススメのディナーを目指し、印を書き込んで貰った地図とにらめっこ、街外れの食堂に向かった。
水路は海迄続いているので、海産物が豊富に出回っている、オススメの食堂は海の幸満載。干し肉だけの食生活を比べると、まさに天国と地獄。旨い肴には旨い酒、トーラス1の酒豪(?)は、米の酒(昴の知識では日本酒と区別がつかない)をクイッ。昴も1杯目はすんなり、2杯目も舐めるようだが飲み干した。一升瓶の残りをひとみが殆ど開けると、
「ひぃたんはね、しゅごく、おくびょうなの・・・ねぇ、きいてる?」
「あ、うん、でも臆病なんて思えないよ。」
「ひぃたんはね、ちゃんとしらべて、しっかりじゅんびして、れんしゅうして、カンペキじゃないと不安なの・・・」
「そうだね、完璧主義って感じだもんね!」
「裕子はさぁ、いつも自信ないって弱気なのに、イザとなったらちゃんと出来るの。圭織はさぁ、気合いと根性だって、何でもやっちゃうし、真理は、現場で学ぶのが一番とか言ってさ、初めての事とか気にしないのよ。それから美貴はね、やってみなきゃわからないって、しんじられないよ。」
「うん、性格出てるよね!それをひとみが纏めてるんだよね?」
「そんなことないよ、真理は上品でキレイだし、圭織はカッコいいしさ、裕子なんてカワイイのにおっぱいだって大きくてさ、ひぃたんは、なんのとりえもないよ。ひんそうなカラダでもさ、昴がロリおっけいならっておもってたら、ソッチじゃ美貴にかなわないもんね・・・わたしのこと、しゅきなの?」
「うん、好きだよ。」
「じゃあ、だいて!」
「抱っこよりおんぶがいいな、もう宿に行こ!」
「そーいうんじゃなくてね・・・」
ひとみをおぶって、歓楽街の奥にありそうな宿に向かった。
船には風呂が無かったので、初めて一緒の入浴。震えてしまうのではと心配していたが、
「ぬがちて!」
仁王立ちでバンザイ。リクエストに応えてから自分も全裸になった。
浄化魔法を掛けているので汚れている訳ではないが、一応身体を洗う。シャンプーで髪を泡だらけにしたひとみは、
「おメメぎゅってするから、ジャーってして!」
カナヅチの人がプールで顔を水につけた様な力みで目を瞑っている、シャワーで流して、
「終わったよ!」
「もう、ブクブクない?」
「大丈夫だよ。」
恐る恐る薄目で確かめて安心すると、
「こんどは、ひぃたんがあらってあげる!」
昴の頭を泡だらけにした。
泡を流して湯に浸かると、ひとみはウトウト。溺れないように包み込む様に抱くと、うっとりして抱き着いた。起きる様子は無いのであがる事にしたが、水切りの魔法は昴には使えないので、バスタオルでチャレンジ、眠って抱き着いたひとみを拭き上げるのはなかなか難しく、なんとか滴らない程度まで頑張って、ベッドに運んだ。
パジャマを着せようかとも思ったが、難易度を考えて却下、密着したままなので、バスタオルを巻く事もままならない。そのままで毛布に包まった。
幸せそうな寝顔を眺めながら、
「今手を出したら、昏睡暴行とか言われそうだな。」
ポツリと呟いて、頭を撫でた。
翌朝目覚めた昴は、ひとみの声でシャキっと覚醒。
「申し訳ございません!酔い潰れた様で!」
「別にさ、暴れた訳じゃないから気にしないでよ。それより、二日酔いじゃない?一応眠ってからアルコールは浄化しておいたけど。」
「少し頭が痛いかな?あとムカムカも。」
「それならね、アルコールが、分解して出来るアセトアルデヒドって言う奴のせいなんだけどさ、僕の魔法じゃ解毒出来ないんだ、パーフェクトヒールなら効くと思うけどどうする?」
「いえ、昨晩のペナルティとして、この辛さき向き合うわ。食欲はないけど、何か食べた方が良さそうよね?」
「うん、そうだよ。じゃ、僕も、支度するね!」
バタバタと用意して、食堂に向かった。




