船室では苦戦
昼間のミッションは既にクリア、夜の方も、昴としては既にクリア済みの認識。美貴としては最低限は達成しているが、機会があれば更にステップアップを期待、まだまだ『済』とは思っていなかった。
美貴の期待は実現せずに遠征は終了。引っ越したばかりの部屋で最後の二人きりの夜を過ごした。
翌朝、ガチガチの昴を処置した美貴は、
「実はね!ちょっと見栄を張ってた事があるの。」
いつもなら、恥ずかしくて口にしない単語でも平気な美貴が、ボソッと言いながら、箪笥から何かを取り出して並んで座った。
「遠征の間にその時が来るかと思って、美貴なりに勝負下着だったのよ。普段はコレ、なんだか落ち着くのよね。」
下腹部を広めに覆うぱんつと、重力に抗う必要が無いため、その機能を持たない、タンクトップを極々短くして、胸だけ覆うようなブラジャー的な物を見せてから身に着けた。微妙なカミングアウトは、微妙な動揺を誘い、これまでの経緯と相まって、昴を再起させた。
「あっ、嬉しい!お兄ちゃんストライクゾーンだったの?これ!」
昴は、反応出来ずにいたが、美貴は今朝2回目を処理、何事も無かった様に、
「じゃあ、皆んなんトコ行こ!」
と、トランクスを渡した。
共用スペースには既に皆んな集まっていて、美貴が報告。
「魔具の試験は殆ど成功で、手直しが必要な物はバズーカ以外は改良済みよ!バズーカもひとみの遠征中には完全させるわね。」
一気に喋って報告完了。
「それからね・・・」
夜のミッション報告が始まった。昴は居心地が悪いので、魔動車の整備と言い訳してその場を離れた。
ほとぼりが冷めたのを見計らって、昴は戻った。特に変わらない雰囲気で、ひとみを残しそれぞれ部屋に帰って行った。
「仕方が無いから、遠征付き合ってあげるわ。水路で北都に向かうからサッサと支度して!」
旅の荷物は、大容量のウエストポーチだし、戻ったばかりだから、特に支度と言っても何もする事は無い。
「直ぐにでも出られるよ、船の時間は?」
「そう言う事は貴方の仕事じゃなくって?今回は私が調べておいたわ。10時の便よ、出掛けましょ。」
ご機嫌斜め?港まで美貴が運転する魔動車で送り、4人は桟橋で見送った。
川を上り、運河で北部へ渡る、川を下って北都まで4日間。水路の開発は、昴が中心だったが、完成前に、王家に引き継いでいて、運行が始まっても利用するのは今回が初めてだった。陸路と比較してのメリットは輸送量。運河開通当初は、山林を縫って走る街道より速くて安全だったが、治安が良くなり、安全面でのアドバンテージは無くなり、道路の拡幅や、橋やトンネルでのショートカットして、所要時間に大差が無くなると、牡牛・北都間の貨物船に特化、移動手段としては滅多に選ばれ無い。
そんな事情なので、豪華客船では無いが、普段見ない景色はなかなかのもの。デッキで風景を楽しむ昴とは対象的に、ひとみは船酔いでダウン。部屋に閉じこもる。
「デッキに出て風に当った方が気持ち悪くならないんじゃないかな?」
真っ青になったひとみは、
「おんぶなら行ってあげてもいいわ。」
フラフラのひとみを背中に、デッキに昇った。
なんとか落ち着いた頃には夕食の時間。豪華ディナーでは無いが、3食が運賃に含まれている、少しでも食べておいた方が良いので、食堂に向かった。取り敢えず胃袋を満たすだけの料理を食べる。ひとみは半分も食べられ無かったが、元々、肉体労働の船乗り達のメニューなので、栄養は足りているだろう。
部屋に戻ろうとすると、
「帰りは歩けと?」
「あ、ゴメン、ハイどうぞ!」
「あら、ありがとう。」
昴の背中で部屋に戻った。
「貴方、皆んなと淫らな事をしていた様ですね、今夜のそのつもり?」
「え?いや、ひとみが嫌がる事はしないから心配しないで。」
「私、嫌だなんて、一言も言って無いわ、私とだけ、しないってコト?」
「そ、そんな訳じゃ・・・」
「なら、遠征4回で覚えたコト披露させてあげる。」
何となく、ダメ出しが来そうな感じで恐る恐る、距離を縮め、密着を強めていった。
「上手に脱がすのよ。」
いつものパターンで、キスを強請る表情を予想して抱き寄せたが、俯き加減で目は軽く開き、視線は床の何処かを彷徨っていた。顎を軽く引いて視線を合わせようとしたが、横目で避けられた。気付くと震えている様に感じた。
「あ、ゴメン、強引だった?船酔いも完璧じゃ無いだろうから、僕は上で寝るね!」
二段ベッドの上段に移動しようとしたが、
「ココに居させてあげるわ。」
昴の袖を掴んで、弱々しく呟いた。
「じゃあ、灯り、消すね。」
服のまま布団に潜った。
ひとみからのアクションは無く、さっきの様子から、昴からも動くべきではなさそう。前回までの積極的な4人がスタンダードに思えて来ていたが、本来男女が初めて同衾して、緊張しない筈が無い。カチカチに緊張したひとみは、美貴とも違う罪悪感を煽り、反応してしまった昴が拍車を掛け、寝返り等で触れたり驚かせたりしないよう、細心の注意を払った。
しばらく眠れずにいたが、明け方爆睡した様だった。




