性病の遊女
死後の後始末を託そうと余命短い奴隷を買うが・・・。
「お客様、いえ、御主人様、よりによって、アチキなんか買うなんて、どういったお考えなのですか?アチキはあと半年も生きられませんし、もう少しで寝たきりですよ。」
「僕の亡骸を散骨して欲しい。それまでの生活費は何とかなる筈だ。キミの薬代は先払いしているから、僕を片付けたら、後は自由にしてくれ。」
冒険者はクエストで帰らない事が殆ど、街で亡くなると通常は共同墓地に埋葬される。
昴は、女の腐れ落ちた耳や、ただれた頬にヒールを掛けたが、効果は無かった。
余命わずかの遊女は、梅毒で仕事も出来ず、病気を隠して奴隷商に払下げ、奴隷商は歩留まりの範囲内と諦めて、捨て値で処分していた。
「タダで持って行っても良いんですが、手数料だけ、小銀貨3枚でお願いします。」
三千円程度の支払いで奴隷に落ちた遊女を手に入れた。所持金はあまり無いが、女一人半年は生活出来る位は有るだろう。
「御主人様も不治の病なのでしょうか?」
「まぁ、そんなところだな。」
多くは語らず、奴隷に着ける首輪を外し、財布代わりの革袋を女に渡した。
昴は廃業しているが、Sランクのヒーラー。強烈な出力と膨大な魔力量を併せ持つ、史上最高のヒーラーと持て囃されたが、実際にヒール出来るのは、かすり傷程度。
「じゃあ、試してみるね!」
街外れの公園に移動、植えてあった棘のある枝を折って、女の手の甲に引っ掻き傷を付けた。
「びっくりしないでね。」
長い詠唱、神々しい光に包まれて、眩しい程の手の平で、傷を覆うと、引っ掻き傷はキレイに消えていた。
「コレが僕の精一杯なんだ。判定がSランクだから、最低賃金のせいで誰も雇ってくれないし、ギルドの会費もランク別だからメチャ高いんだ。他の仕事も出来ないから、もう死のうと思って。」
「そう言う事でしたら、アチキを抱いて頂けませんか?物心ついた頃には娼館に売られていて、父母の記憶も無いんです。出来ることはオンナを売るコトだけ、これから死なれるのでしたら、病気が感染っても問題ないですよね?買って頂いたのに、何も出来ないのは遊女の名折れです。」
昴は、女の提案に乗り、宿に帰った。
「何て呼ぼう?僕はご主人様は勘弁だな。呼び捨てで『昴』がいいな。」
「では、アチキも『松風』でお願いします。」
「じゃあ『お松』でどうかな?敬語もやめようか?」
「ありがとうございます、嬉しいです!敬語の方は難しいですね、善処いたします。」
ベッドの上で三つ指をつくと、
「気持ち悪かったら、やめて頂いても構いません、ご自由にどうぞ。」
思っても見なかったが、死ぬ前に童貞を卒業出来ると、早速ベッドに入った。
「気休めだけど、キミの病気はココからだから、ヒールしてみよう。擦り傷も直に触ったほうが効果あるからね。」
再び長い詠唱が始まり、神々しい輝きを人差し指に集中。松風に挿入した。すると松風は昴の指が入った松風のとこらか光り、やがて全身が輝いた。昴は更に魔力を込めると、何やら手応えを感じた。
松風の輝きが収まると、それまでは老婆の様に見えていたが、実年齢の30台を超え、十代半ば位になっていた。
「あれ?何だろ?痛さも辛さも無くなりました、目もハッキリ見えるし、耳も良く聞こえます!」
掠れて聞き辛かった声ではない溌剌とした声が喜びを伝えた。
昴は、自分が死んでから、松風が暮らしていけるよう、働き口を見つけてから逝こうと考えて、松風に相談すると、
「王都の高級娼館にアチキを売って下さいな。そこなら孕んだり、病気を感染されたりしない、ゴムの道具を使うそうなんです。今のアチキなら高く売れますよ!」
「いや、そんな酷いこと出来ないよ!」
「アチキは他のこと、何も出来ないし、遊女のお仕事は嫌いじゃ無いの。出来れば、働き易い所が良いからね、お願い、王都に連れて行って!」
松風の希望を通し、王都に向かう。途中気が変わったら、別の手段を考える事にして、4泊5日の旅に出た。
毎晩同衾していたが、ただそれだけだった。死にそうな老婆が遊女のプライドで、仕事を熟したいと言うことであれば、WIN―WINの関係だが、健康になった上若返った松風とはそう言う関係には思えない。
「多分16歳の頃に戻ってますね、もしかしたら、初モノですよ、売る前に味見して下さいな。」
更に手を出せなくなってしまった。
結局、松風の決意が変わらないまま王都に到着した。
「やっぱり抱いてくれないんですね。」
「キミの代金で、ギルドの会費払ってくれた元のパーティーメンバーに返して来る。死ぬ前に客として来るよ、そん時はよろしくね!」
貴族や高位冒険者、豪商等が贔屓にする、最高級の娼館を訪れた。松風の自己査定が大金貨3枚だったが、それを超える4枚、四百万相当の値が付いた。
「高く売れた時のお願い、良いですか?」
昴は指切りをして娼館を、去っていった。




