ダンジョンは余裕
さて本番(?)、リハビリ兼チカラ試し。突進が武器の鹿系の魔物を狩る。
高速での突進をまともに受けてしまえばかなりの重傷だろう。結界をバリケードに、魔物の動きを封じ、剣でトドメを刺す。当然、昴は結界を担当する。
森に踏み入ると早速、鹿の突進に襲われる。想定済みの昴は、正面に結界を張って迎え撃つ。鹿は見えない壁に突っ込み脳震盪でダウン。圭織がサクっとトドメを刺した。
「今のも悪く無いが、相手が猪系や巨大化した魔物の場合、結界ごとヤラれる可能性も考えられる、受け流すと、衝撃も少ない筈だ!」
昴は頷いて、壁を斜めにイメージすると、次の鹿は、斜めに吹っ飛び、大きな岩に突っ込んでゲームオーバー。圭織の出る幕は無かった。
何度か試し、しっかりとコツを掴んだ。次は鹿の解体、8頭仕留め1頭だけ昴がチャレンジ、美貴が作った特殊なナイフで切り分ける。ナイフは昴の魔力を纏い、切れ味を高める。通常のナイフにヒールをいくら掛けても何も起こらないが、風系の魔力に変換して、鹿の魔物は、絹ごし豆腐の様に切り分けられていった。
「ランチは鹿ステーキだね!圭織は赤身が好きだったよね?」
ステーキ用に大きめに切って、竈の支度に取り掛かった。因みに他の7頭は回収業者に依頼する。
ランチをしながら午前中の反省会。結界でのガードは、張ってしまえば無敵と言う訳では無く、維持には魔力消費があるし、受けた衝撃に比例してその消費量が増えるらしい。真っ向勝負は避け、障害物に突進させるのがベストの様だ。
午後は、猿系。戦闘力は高くないが、増えると人里に降りて畑や倉庫等を荒らすので、駆除対象になっている。すばしっこく逃げながら攻めて来る猿達を結界で捕まえるのがミッション。
裕子との訓練でも、なかなか上手く行かなかった結界での拘束は、相手がすばしっこいので更にハードルが高かった。夕方まで失敗を繰り返し、何となくコツが見えかけた辺りで日没コールド。ディナーも鹿ステーキ、少しだけ味変して、舌と胃袋を満足させた。
午後の分の反省会も終了、明日はまた猿狩りという事でテントに入った。
「今の気候なら寝袋は必要無いだろう?」
口調はイケメンのままだったが、俯きがちに、薄っすら赤くなった顔は、甘えっ子の幼女の様に見えた。
昴の反応は求めていなかった様で、回答を待つこと無くウエストポーチからマットレスと毛布を取り出した。簡易的なものなので、一般のシングルより狭いが、出て来たのはひと組だけ、枕は2つなので、同衾するつもりの様だ。平静を装っていたが、後ろからでも赤面しているのが解るほどだった。装備や上着を脱いだだけなので、昨夜の様な接触は想定しなくても良さそうで、少しホッとして狭いマットレスの奥の方に寝転んだ。
「テントでは少し落ち着かないから、脱ぐのはコレだけにしよう。」
圭織はスカートの裾を少し捲ると、両手は少し上に。次に降りて来た時には小さな布切れが一緒だった。すんなりと足首を通過させると、
「万が一の時、コレが無ければ、落ち着かない。ボクの服にはポケットが無いから預かって欲しい。」
昴のシャツのポケットに押し込んだ。
想定外の行動に昴は即反応、居心地の悪い向きで固くなってしまい、方向転換出来ずに苦しんでいた。ベルトを緩めてポジションを修正していると、
「昴が脱ぐのならボクも!」
「いや、脱いで無いから!」
事情を説明すると、ひとまずは納得、
「ではやはり、ボクの出番の様だ。昨夜のお礼だ、任せてくれないか!」
大きな決断のためか、圭織はいつものイケメンモードに戻り、昴を説得。ずっと固辞していた昴が首を縦に振ると、昴の又の間に正座した。
険しい表情で昴を握・・・ろうと、触れた手はビクリと引っ込んだ。
「@》_+○&@!」
言葉にならない何かを呟く。一時停止の様に動かなくなってしまった。思考がオーバーヒートしているようで、昴は無理をさせず、抱き寄せて一緒に横になった。
少しして落ち着いた圭織は、
「済まない、能動的な行為はまだハードルが高かっ!?いや違っ!!そんな事を言えば、受動的な行為を強請っているみたいじゃないか!あ、あの、いや、その、なんでもな・・・」
また過負荷になった様で、更に何か言おうとしていたが、唇で塞ぎ、腕枕で頭を撫でた。
落ち着きを確認して、
「昨日みたいに触ってもいい?」
「き、聞くな!答えればボクが強請ったみたいじゃないか!えっと、その、|ぇノぁぇデ、アレ脱ぃぁンぁカぁ察スぇょ《めのまえでアレぬいだんだからさっすれよ》。」
そっとおでこを胸板に押し当てた。
昴の中指は圭織を訪れた。昨夜とは違い、ある程度の湿り気があったので、呼び水は必要とせず、直ぐに攻略に取り掛かった。




