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墓穴を掘るポンコツ治癒師

ソロで冒険者を地道に続ける昴だが、思わぬところで・・・。

 昴は、それからも身の丈にあった依頼を着実に熟して蓄えも少しずつ増やしていた。

 ある日、急な大雨に当たり、洞窟で雨宿り。なかなか止まないので、テントを用意していると、雷が鳴り響き、悲鳴と共に初心者っぽい女性4人のパーティーが駆け込んで来た。

「ウワっ!ごめんなさい、先客でしたね!」

「別に占領しているつもり有りませんから、気にしないで下さい。」

昴は、焚き火に薪を追加した。

 焚き火を囲んで暖を取っていると、4人は顔と腕、肌が出ている所が傷だらけだった。

「痕になると不味いんでヒールしておきましょう。ちょっと触りますよ。」

 昴は長い詠唱で手の平を金色に輝かせると隣に座った人の手の甲から二の腕にかけて、ゆっくりと、撫でた。傷はスッキリ消え、痛みも勿論無くなった。

「こんな完璧に!スミマセン、余り持ち合わせっていうか、お金持ってないんで・・・」

「気にしないで、魔力は結構強い方なんですけど、コレが精一杯なんです。コレなら、いくらでも出来るんでお金なんて要りませんよ。」

そう言いながら顔ともう一方の腕を治した。その勢いのまま4人をヒール。

「あのぅ、ご自身の傷は治さないんですか?」

「ああ、僕のヒールって女性限定なんです。あと、今回は小さい傷がいっぱいだったから治せましたけど、深い傷とか、骨折とかはムリなんです。」

「詠唱とか、光り方とか、腕の1本位生えて来そうな魔法みたいですよね?伝わる魔力もハンパ無いですし。壁だって!」

無駄に放たれた魔力が、洞窟の岩壁をほんのり明るく光らせていた。


 ヒールのお礼と言って、4人組は夕食の準備を始めた。そのくらいならギブアンドテイクで問題無いと、お喋りしながら待っていると、突如魔物の気配。

「不味い、強そうなヤツが群れで近付いているわ!」

昴は、洞窟の入口に立ちはだかり、山羊の魔物を斬り伏せる。普段は攻撃的な魔物ではないが闘牛の様に突進してくる。洞窟は、結界で塞いでいる。バタバタと数頭倒したが、1頭に侵入を許してしまった。

 中に入った1頭は4人組が迎え撃つ。但し、接近戦は苦手のようでかなりのダメージと引き換えになんとか倒した。

 昴もズタボロになりながから、斬り続け、半数程になった頃、別の洞窟で雨を凌いでいたベテラン冒険者が様子を見に来て、火炎魔法で追い払ってくれた。


「何だろう?少し前に、感じたことの無い強力な魔力をコッチの方に感じたんだ、山羊達はソレに興奮して狂暴化したんだと思うぜ、また起きたらヤバイから、ムリしてでも下山した方が良さそうだぜ。」

 どうやら、昴のヒールが魔物を呼んだらしい。洞窟内で戦った4人はかなりの重症で、昴の手に負える状態では無かった。ベテランパーティーのヒーラーが、何とか歩ける程度まで回復、心配された強力な魔力放出は、原因が解っているので、朝を待ってからの下山。念の為ベテランパーティーの居た洞窟に移動することにした。


 翌日下山。女性パーティーは採取した薬草を山羊の襲撃で失い依頼は失敗、失敗のペナルティーと、治療費に昴は蓄えのほぼ全てを支払った。


 幾らかの小銭を持って、冒険者を廃業。剣や、防具、アウトドアグッズのような、装備品を売り払った。

 他の職を探したが、世襲制か、子供の頃から弟子入りしなければならない職ばかり、何とか見つけた仕事では、その日の食い扶持にもならなかった。


 進路を、絶たれた昴は、死を決意する。最後の望みは死後、共同墓地ではなく、海への散骨。コッチではそういう風習は無いので、それを依頼する方法を考えた。頼れるとしたらアルデバランだが、散々迷路を掛けているので頼みづらい。

 そんな時、街でバッタリとアルデバランに会った。

「丁度良かった、ちょっとヘマしちゃってさ・・・」

 貴浩の話しによると、誤って沼に落ち、そこが剃刀魚の大群の真っ只中。剃刀魚は攻撃して来る訳では無いが、逃げ惑う間に、鋭いヒレが無数の傷を作ったらしい。

「装備連携は切れちゃってたの?」

 魔道具の装備品は、連携させておくと、装備で覆われていなくても防御効果がある。例えば膝まで覆うレガースとベルトを連携させると下半身全てが護られる。幾つかの装備品で全身が護られている筈、防御力を超えると、ダメージを受けるが、擦り傷やアオタン程度。

「水の中でスカートが捲れ上がって、ベルトとレガースの連携が切れたみたいなの、小さい傷ばかりなんだけど、痛くて座れないわ。」

今回は男女ともヒールを希望、勿論引受けるが、

「居酒屋で出来る場所じゃないよね?」

全員が頷くと、

「じゃあ、宿に行こ!」

昴の提案に3組が顔を見合わせた。昴は状況を察し、

「2人ずつで3部屋取ってるんでしょ?別に気にしないし。戦闘服もスカートなんでしょ?」

少し気まずそうな6人を気にせず、宿に向かった。女性の戦闘服はミニスカートかショーパン。既婚者とかパートナーがいる人が前者、シングルの人が後者を穿く。


「僕は、元々医大生でアッチ居ればもう医者になってる筈だから、見たり触れたりするのも、治療と割り切る事が出来るんだけどさ、見られる方は嫌だよね?触るのは避けられないから、毛布を掛けて手探りで治すね!」

「それは気にしないわ、私も元ナースだから、そんなのフツーって感じよ。」

「じゃあ君からだね。」

大輔、由依と3人で部屋に入る。どうせベッドは1つしか使わないのでシングルルーム。由依はスルリとスカートの中を脱ぐと、背中を向けて、スカートを捲り上げた。

 無数の引っ掻き傷の一つ一つは、パックリ開いた様な深さではなく、血が滲む程度。昴の守備範囲だった。太腿からウエストまで金の手の平で撫でると、傷はキレイに無くなった。

「後ろは終わった?じゃあ、前もお願いね。」

スカートをたくし上げたまま振り返った。羞恥心を一切感じさせない様子は、医療行為との割り切りに貢献、余計な事を考える事無く、ヒールを完了した。


「じゃ、昔取った杵柄でナース役してあげる、その方が美音もみなみも安心して、御開帳できるでしょ!」

 由依の主導でみなみをヒール。後ろを順調に済ませ、まわれ右を躊躇うみなみに、

「治療なんだから、恥ずかしくないよ、ほら、キレイになってるでしょ?」

自分で捲り上げたスカートの中はヒールの時のまま、昴の手を掴むと、モザイクが必要な部分に手の平を、押し当てた。

「・・・そうだよね。うん、じゃあお願い。」

 その後は波風無しで美音のヒールも完了した。

「俺等も、本調子じゃ無いんだ、男のヒールはムリなんだろ?取り敢えず、寝て治すからさ、飯は今度で良いかな?」

申し訳無さそうな貴浩に、

「何の役にも立っていなかったのに、気を使ってくれてたからね、その分のお礼にもならない位だからさ、そんな事気にしないでよ。」

 相場よりかなり多めで小金貨3枚受け取り、それぞれの部屋でのこれからの事が簡単に予想出来たので、それを、邪魔しないよう、さっさと宿を出る。結局、散骨の事は切り出せなかった。

 宿を出て部屋の下の道を歩くと、3つの部屋には、予想通り、遮音結界が張られていた。

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