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娼館経営

 昴は、隣の部屋から、身請けした4人を呼んだ。王都で転職した女性が、後輩をスカウトしたと言う設定。無難に顔合わせして、翌日の出発に備えた。

 その気になれば、ハーレム状態であんなコトもこんなコトもと妄想しながら別の部屋で、膨らんだ欲求を右手で処理して、痩せ我慢をまた少し後悔して眠りについた。


 復路でも盗賊は後を絶たない。食事や休憩で馬車を降りると、周囲の視線が痛いほど。

「良い宣伝になるわ!」

何度も何度も襲われ、都度返り討ち。収入は昴の取り分なので、ポーチの分を稼ぐつもりだろう。


 通常、4泊5日の行程を7泊8日で王都に到着した。遊女以外の道を選んだ菖蒲には当面の生活費で小金貨3枚を渡し、トーラスとはギルドで手続きして別れた。

 松風の居る娼館に3人を連れて行く。気が変わったら菖蒲の様な選択もアリだと、門で再確認。人身売買の後ろめたさも有って、心変わりを期待していたが、そのまま門を潜り、昴は、大金貨12枚を手に娼館を出た。


 返り討ちにした盗賊達の中には、表の顔を持ち、見かけは健全な商売をしている者もいて、王都に宿屋が1軒、商店が3軒、飲食店が6軒、娼館が1軒、昴の物になっている。日本の舎弟企業のような感じで、賊とは関係の無い一般の人が働いていて、商店では盗品や拐った子女をペーパーカンパニーを経由し、合法的な物として仕入れて、販売しているようだ。

 2店舗を売り、残りは冒険者からの買い取りとその販売がメインだったのでそれだけを残した。特に放置しておいても心配無さそうだった。

 宿屋と飲食店は不動産投資のようで、全て売り払う。娼館も売りたかったが、買い手が付かず、当面は経営する事にした。

 資金を娼館に集中出来るので、大幅リニューアル。内外装を高級志向に変え、遊女達は渾身のヒールで病気の心配を排除、騙されたり不法に働かされている者は希望すれば解放、不足分は、病気等を理由に、劣悪環境で安く売っている娼婦をスカウト、ヒールで健康な少女に戻して穴埋めをした。

 改装前より割高な価格設定と、避妊具を義務付ける事で、かなりの客離れを覚悟していたが、安心して遊べる事の方に需要があった様で、すぐに軌道に乗り、改装費用はあっという間に回収出来た。


 副業(?)も順調。建物を建てたり、改装するには、資材と設計と魔法が必要で、専門家に任せるのが普通。昴も地元業者に依頼したが、二度目の時、納期が大幅に遅れ、仕上がりも雑な所が目立った。引き渡し後に、手直しに来た職人さんに聞くと、

「現場を仕切っていた棟梁が社長と揉めまして・・・」

 かなりブラックな職場の様で、更には男尊女卑が激しいらしい、棟梁をはじめ、第一線で働いていた女性と揉め、大量解雇したそうだ。

 周囲に裏付け捜査をすると、職人の話しに嘘はなく、元棟梁を訪ねてみた。

「ああ、姉御に用かい?帰って来ねぇよ!」

留守らしいが、それ以上の情報は無かった。

 近所の食堂や店でも同じ様な感じだったが、教会から解呪の祈りが聞こえたので、ヒールで会話の切っ掛けが掴めればと、大きな扉をノックしてみた。

 呪いが原因で、かなり重篤な患者が6人。(幸い?)全員が女性だったので、シスターにヒールを申し出た。

 何とか意識のある女性に、ヒールの事情を説明、弱々しく親指を立てたので、早速、長い詠唱。金色に輝く人差し指を布団の中のその中に挿し込んだ。

 快復した女性は直ぐに起き上がり、

「ありがとうございます。今、失業中なもので、お礼はお待ち頂きたいのですが。」

「別に良いですよ、ちょっと人探しをしているので、もし分かったらご協力頂ければ助かります。」

「お安い御用です!どんな方ですか?」

昴が説明すると、

「ハイ、私です。」

元棟梁、本人だった。 

「社長が気に食わないのが一番だけどさ、娼館を建てるのは、女として納得したくないんです。」

 自分がオーナーだと打ち明け、盗賊を捕まえた戦利品で売りたくても売れなかったので、折角なら、遊女達が働き易い職場にしてみようと改革中とアピール、松風達の様に、遊女から足を洗う選択肢があっても、続けるケースがあった事や、病気や妊娠対策を万全にして健康に働くことが出来る事、道端で朽ちる様に死んでいく娼婦が激減している事を告げ、業務提携を申し込んだ。

「そう言う事なら協力しましょう。因みに、一番奥のベッドはその、朽ちていく娼婦ですよ。」

 昴はヒールをしようと、慌てて駆け寄ったが、

「あれ?菖蒲さん?大丈夫ですか?」

 詠唱を始めながら、脈をとると、残念ながら既に亡くなっていた。彼女の経緯を棟梁に話すと、

「職探しに王都に出てきたって言ってましたよ。騙されて直ぐに一文無し、道端で客をとって暮らしていたそうです。娼館を無くすと言うか、女を買う習慣が無くなればそれが理想ですが、現実的には、貴方が作る、安全な娼館が最善策なのかも知れませんね。この娘達は、一緒にクビになった職人なんですけど、ヒールをお願い出来ますか?お礼は後払い・・・」

「ヒールはすぐにでも出来ますが、魔力の注入口がね、場所が場所だけに、本人の同意貰ってからにしてるんです。」

「大丈夫、私が納得したんですから、私がモンク言わせません。」

4人をヒール、菖蒲を弔い、棟梁の家で、改装のやり直しと、次からの仕事を打ち合わせた。

 2軒目の不具合は、棟梁が術式を一部刻まなかった為で、現場に行くと、ものの10分で作業を済ませ、魔力を込めると、不具合は全て解消された。元の会社は3軒目以降を考慮して大幅な値引き対応。浮いた資金は、女性棟梁と共に起ち上げる新会社で3軒目に着手した。

 松風達の高級娼館は別格だが、それを、除いては群を抜いた高級感と安全性、ライバル店が後を追って高級志向にシフトしていったが、遊女達の病気が災いし、改装費用だけが重くのし掛かる。経営の厳しい数店が廃業を考えると、昴は買い取ってチェーン店とした。勿論、病気はヒールで完治させ、若返らせて座敷に送り込む。その手順もヒール以外は従業員に任せていた。

 道端や物陰で商売をしていた娼婦が居なくなると、高級志向に失敗したライバル店は、格安路線に鞍替え、夜の街に棲み分けが確立した。安さを追求した所は、一時的には繁盛したが、病気の蔓延や、サービス低下等で歓楽街の殆どを昴の店が占め、毎晩毎晩、金庫に金貨が運び込まれるようになる。

 建築には、資材の購入、運搬等、様々な業種の人達が関わるが、棟梁の人脈で、必要な人材は確保、一部は棟梁の様に、女性だという事だけで冷遇されていた人が独立して、仲間入りしている。

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