ヒールに確信
古巣のアルデバランが戻ったのは、予想より少し遅く、トーラスと合流する日だった。
「どうしたんだ!?」
「あっ昴、ご無沙汰!何処か行ってたのか?」
「ああ、王都にね。で、前に払って貰ったギルドの会費、返そうと思って。それよりどうしたんだ?、皆んなボロボロじゃないか!」
「俺らはただ疲れてるだけなんだけどさ、女子は呪いを受けたんだと思うんだ、ベテランさんとかにも聞いたんだけど、治るかどうかも解らないんだって。一休みしてから王都に行って、有名なヒーラーに診て貰おうと思って。」
「それなら、ダメ元で僕に診させてくれる?かなり特殊なヒールを覚えたんだ。」
「全身全霊でかすり傷だったよな?ダンジョンでAランクのヒーラーに診て貰っても駄目だったんだぜ、大丈夫か?」
アルデバランの宿で、ヒールの内容と、実績を告げると、全員の同意が得られたので、ベッドに寝かせ毛布を掛け、中の準備は自身で行ない、金色に輝く人差し指を挿入。しっかりと魔力を注入すると、軽く手応えを感じ、すぐに注入をストップ。3人終わっても、魔力に余裕があった。軽い手応えのあと注入を継続すると、若返るらしい、今回の3人はほぼ元通りで副反応の影響は全く解らなかった。
肩代わりしてもらっていたギルドの会費は、小金貨6枚。アルデバランメンバー達は、貸したつもりでは無かったので返金を断る。昴が食い下がると、
「今のヒール、ソレ以上の価値あるだろ?借金だったとしてもこれでチャラって事にしないか?あと、どうだ、ヒーラーとして復帰しないか?」
「いや、また足を引っ張るのが目に見えるからね。今回みたいな事があれば手伝うから、定住したら連絡するよ。それよりさ、あんま乗り気じゃないんだけどさ、今のヒール、女性にしか試した事ないんだけどさ、男の場合ってさ・・・」
「あ、いや、コレくらい日常茶飯事、大丈夫、大丈夫、寝てりゃ治るさ!じゃあ、連絡先決まったらギルドに知らせてくれよな!」
昴は追い出される様に宿を出た。
昴が帰ると、3組はそれぞれの部屋。古傷迄治って、身体の隅々をチェックしながらみなみは、
「折角なんだからさ、聡も診て貰えば良かったじゃん!」
「いや、アイツのヒールってさ、前から男には、効かなくて、かすり傷も治らなかっただろ?実はさ、アイツがヒールするとさ、副反応?部分的にパワーが漲るんだ、今もだけど。」
「それって、もしかして?」
みなみは抱き寄せられるがまま、副反応の恩恵を味わった。時を同じくして、左右の部屋でも、遮音結界で聞こえはしないが、ベッドを軋ませる音と、R指定の声が響き渡った。
昴が脱退する時、男3人は猛反対だった。元々はみなみ、由依が昴の高校の同級生、美音が昴の幼馴染、昴の通う医大の付属病院で3人が働いていた。令和の日本では、女子3人が昴狙い、男子3人は、そこの入院患者、同い年で同じ学校に通っていた事もあるが、ほぼ面識は無かった。脱退は女子達からの提案だった。
「あの時、昴を引き留めたのって、この副反応?」
聡は答えの代わりに、激しくベッドを軋ませた。
「そう言えば・・・」
みなみはいつかの女湯での会話を思い出した。
由依は少し恥ずかしそうに、
「あのさ、盗み聞きしてる訳じゃないんだけどさ、アノ時って、遮音結界張るでしょ?でも何となく、中の様子想像出来るでしょ?」
「あ、ええ、そうね、どうしたの急に?」
「大輔がさ、ちょっと元気無いって言うかさ・・・」
「やっぱそう?聡も、前は際限無かったから、夜3回まで、朝1回だけって上限決めてたんだけどさ、夜は1回キリだし、朝も毎朝じゃなくなったんだよね。」
「・・・おんなじ感じかな?貴浩も。」
「美音、割と毎朝よね?」
「・・・えっとね、朝はさ、黙ってても硬くなってるからね、自分で跨るの。そしたら起きて続きを任せるの。夜もね、もっと欲しい時は、こうやったり、こうしたりして、復活させちゃえば後はお任せで楽しめるの。」
こうやったり、こうしたりの仕草で、みなみ、由依は茹で上がってしまった。美音は更に、タオルをオシボリの様な棒状にして、
「わたしは物理的に無理だけどね、こうやって挟んであげるのも良いみたい。」
お湯に浮かんだみなみの2つの肉塊にタオルを挟んだ。
「アリガト、コンド、タメシテミルネ。」
カタコトの日本になって風呂を出た。
冒険者なら、擦り傷とか、青あざなんて有って当たり前。毎晩ヒールしていたので、副反応も毎日発生していたと思われる。
昴は、幼い頃から一途に美音を想っていたが、高校と大学の8年間、みなみ、由依のアタックに靡きかけたりしていた間柄だったのに、宿では一旦それぞれの個室で寝静まってから、ゴソゴソと部屋替えして遮音結界、中の様子は容易に想像がついてしまう。そんな状況はただでさえ苦痛なのに、自分がそれに拍車をかけでいることに気付きていたら、なかなか受け容れられる事ではなかっただろう。
昴は、自分の宿に戻る途中、魔道具屋に寄って、掘り出し物を物色した。飛び付きたい衝動を抑え、
「コレってどの位入ります?」
「お目が高い!普通は大金貨2枚は下りませんよ。」
小金貨8枚のウエストポーチ、モノにもよるが、ちょっとした物置き位だったり、倉庫並の容量があったりする。
「これは、使用者の魔力で変わるんです、Fならスーツケース位、Dになると、物置きは軽く入っちゃいます。ちょっとその辺りが不便で売れないんですよ。」
「スーツケースねぇ・・・。」
「半値ならどうだい?」
「うーん、4つで丁度にして貰える?」
「ヨシ!売った!」
余りにもアッサリ値切れて拍子抜けの昴だったが、元値が吹っ掛けだったら、程々の成果かも?と宿に帰った。
トーラスはギルドに男達を突き出してから先に戻っていて、ダンジョンでの戦利品を整理していた。
「随分大荷物だね、ギルドで引き取り出来なかったの?」
「王都で売った方が高値が付くんだって!」
裕子は、パズルの様にパッキング。
「丁度良かった!コレ使ってよ!」
ウエストポーチを配ると、
「コレ、ギルドの斜向かいの魔道具屋さん?」
ひとみはじっくり品定め、
「やっぱりそうね、幾らしたの?」
「4つで大金貨1枚だけど。もしかしてバッタ品だった?」
「ううん、ダンジョン行く前に見たんだけど、手が出なかったのよね、1個が大金貨1枚、ガッツリ稼いで4人でシェアするつもりでいたのよ。」
「良かった、喜んで貰えて!」
「流石にこんな高額な物・・・」
「盗賊を返り討ちした分で余裕だから気にしないで。元々、あの稼ぎが僕の取り分ってルール自体が可怪しいんだ。」
ほぼ無理矢理、ポーチの所有権はトーラスメンバーに移管された。




