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遊女達を身請け

 南の港町に到着。先ずはギルドを訪れ、元パーティーメンバーに会う。馴染の受付嬢に聞くと、1週間程前に遠征に出ていて、順調に熟せば、今日明日辺りの帰還らしい。

 冒険者の頃よく泊まっていた宿をとり、ギルドに連絡を頼んだ。


 トーラスの4人は、近くのダンジョンを攻める。3日後に合流する約束で、昴は独りで、松風が居た娼館に向かった。

「梅枝さん、桜花さん、菊花さんをお願いします。」

「恐れ入りますが、生憎、3名とも、体調を崩しておりまして、お座敷には出ておりません、他の娘では如何でしょう?」

「そうですか、因みに、3人の病気って、松風さんと同じ病気でしょうか?」

「えっ、そ、その、ご存知なのでしょうか?」

 松風が死ぬ前にひと目だけでも会いたいと病魔に犯されながらも訴え、3人は、自分の客を引き継いでいるので、同じ病気に罹っている可能性が高いので、動けるうちに自由にして上げたいと昴に頼んだ事を告げた。

「これは、これは!では最上級のお座敷に人気の娘達をご用意致します、花代は結構ですので、ごゆるりとお楽しみ下さい。」

 番頭は、遊女の性病をネタに強請られていると判断したようだった。

「いえ、もう働け無い様子でしたら、身請けさせて頂けないでしょうか?悪評が流れる心配も無くなりますよね?」

病気をネタにするのはここからだった。多分、数ヶ月前、現役で稼いで居た頃なら、大金貨5枚程度、3人で15枚。実質リタイア状態で、病気の口止め料を考慮、松風の見積もりでは、1人大金貨1枚からの値引き交渉だったが、

「3人で、大金貨1枚で如何でしょう?」

更に低い提示に、飛び付くのを我慢、渋々を装って、

「そうですね、では、交渉成立です。直ぐに呼んで貰えますか?」

「勿論です。あと、よろしければなのですが、もう一人同じ病気の娘が居りまして、ご一緒に如何かと思いまして。」

「おいくら?」

「小金貨2枚で如何でしょう?」

「では、一緒に呼んで下さい。」


 予算の半分以下で、1人多い4人を身請けし、宿に連れ帰った昴は、松風との経緯を説明、ヒールを試す了承を得ようとした。

「そんな、お気遣いなさらず、命令してくださいな。」

 追加で身請けした菖蒲が奴隷の首輪を摘んで見せた。

「ああ、ごめん、忘れてた!」

昴は、カチャカチャと首輪を外して回った。

 4人共、何の躊躇いも無く、ヒールを受け容れ、即実施。1人終わる毎に回復剤を飲んで、あっさりと完治させた。副反応はやはり同じ様に現れ、15、6歳の容姿になっている。

「松風姐さんはどうしているのですか?」

「今は、王都の娼館だよ、他の仕事知らないし、遊女の仕事も嫌いじゃ無いって。」

 松風を売った金で皆んなを買った旨を伝えると、松風に頼まれていた3人は、同じ娼館に売って欲しいと言い、菖蒲は王都で普通の職に就きたいと言う。馬車はパンパンに混み合うが、一緒に連れて行く事にした。


 その頃、トーラスの4人は、ダンジョンを攻めていた。特に美味しい仕事ではないが、昴と時間を合わせるのに丁度良さそうと言う理由でチョイス。

 練習中の魔法を試しながら深層へ進む。それ程人はいないが、少し前に誰か通っている様で、魔物の数は多くない。

 先を行くパーティーが、片付けてしまうと、実入りが少なくなるが、魔法のお試しを重視しているので、気にせずに潜って行く。


 腹時計が夜を告げる。キャンプ出来るスペースを探してウロウロしていると、防音結界(遮音結界の劣化版)から悲鳴が漏れて来た。

 入り口に結界を張れば、中が安全地帯になるので、ダンジョンでは洞穴に泊まるのがセオリーだが、悲鳴が聞こえたのは、都合の良さそうな洞穴からだった。

 真理は、結界の術式を読み取ると、

「あら、コレだけ?」

スッと手を翳して結界を解いた。

 直ぐに踏み込んで、魔物退治!と思ったが、中にいたのは冒険者の男女3人ずつ。女性冒険者が襲われている様に見えるが、流石に事情も解らずに一方的に攻撃する事にも行かず、

「何か有りまして?悲鳴が聞こえたわよ!」

ひとみが声を掛けると、

「邪魔すんなよ、今、イイトコなんだ!お、お前、この前の女!生きていやがったのか?なんで元の歳に戻ってるん・・・ングっ!!」

初見の判断が正しかった事が確認出来たので、真理が結界で拘束、なんとか抵抗していた女性達を助けると、

「コレ、彼奴等が付けていたネックレスでしょ?」

ひとみの問に不思議そうに頷くと、3人の首から外し、男達の首に掛けた。

 幸い、女性達は抵抗した時の擦り傷や無理矢理脱がそうとして服が破けた程度。自分達でヒールして、テントに入って着替えで出て来た。

 ひとみは尋問と言って、まずは雷土魔法で脅す・・・と思ったが、一撃で失神、慌ててヒールを掛けた。

 意識を取り戻した男達に、

「先日は、お世話になりましたね、おかげさまで素敵なパーティーに参加出来るように、なりましたわ、何かお礼が必要ね、えっと・・・あった!コレ!」

荷物の中から水晶珠を取り戻し、それを通して、拘束した男の目を覗き込む。

「フン、コレね!老化魔法。で、こうやって・・・」

呪文を唱え、男がぐったりすると、また水晶珠を出して他の男達に同じ術を掛けた。

「この人達って、ひとみを騙した人?」

裕子が心配そうに尋ねると、

「ええ、間違い無いわ、面倒なスキルは切り取っておいたから、起こして尋問しましょう!」

普段の尋問でも容赦のないひとみが、自分に危害を加えた相手をどうするか、やや心配な裕子だったが、男達が完全に白旗状態だったので、アッサリと余罪を吐いて、生命に関わる事には至らずに済んだ。

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