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プロローグ
時は2145年。悪夢と称された第三次世界大戦ののち、世界政府がこの世界を統一して早25年ほどが経った頃。人々は平和に徐々に順応しつつあった。戦争を知らぬ子供達が増え、歴史として語られることが多くなる。そんな中、第六都市ヤマト(旧・日本)のとある街で、夜中に一人の少女が笑みを浮かべていた。
「フフフ…応えよ、我の闇!紅眼暗黒翔龍!」
佐藤あかりは、とある病を患っていた。マジックペンで手首に描いた謎の紋様に向かって、更に声を上げる。
「クッ…この右腕に呼応して…奴が…目覚めてしまうッ!」
言うまでもない。彼女は、厨二病なのである。まさしく14歳の頃目覚めて以来、かれこれ2年ほどの歳月が経ってしまった。名は体を表す、という言葉があるが彼女は自身が通うエコールではクラスの中心的存在である。その一方でこの病を誰にも言わずにひた隠しにしてここまで生きてきたのはレアなケースと言えるだろう。自分でも痛いことは理解している。ただ、右腕の疼きは、止めることができないのである。
そんな彼女が過ごす日常に、大きな変化が訪れる時が、近づきつつあった。