6:イモコの才能?
「ハジメ、行ってくる」
「ハジメさん、行ってきます」
クロとイモコは裏山に出かける。イモコがやってきて数日経つが、特に問題なくハジメたちとの生活に馴染んでいた。
イモコはクロの妹分のポジションについていた。 クロがこの家の先輩というのもあるがイモコは元々舎弟気質なのかもしれない。
クロはというと後輩ができ先輩風をビュービュー吹かせご満悦だった。
しかしイモコの方が大きいので、側から見ると妹に付き合う姉のように見えるが言わぬが花だ。
ともかく二人が仲良くできているようで一安心だ。
イモコが来たことでおやつの時間も賑やかになった。
「ん〜、この酸っぱさクセになります」
イモコは酢昆布や練り梅など酸っぱいものが好きらしく好んで食べていた。うっとりした恍惚の表情はどこか惹きつけられるようなものを感じる。
実際、酸っぱいものが苦手なクロも釣られて同じものを口にするがやっぱりダメで涙目になりながらコクコク水を飲んでいた。
わずか数日の間の出来事だが、すでにこの光景を何度も見ていた。
決してクロが学習していないという訳ではなく、イモコの食べる表情が反則的なのだ。何度見ても食べてみたいと思わせる魔力のような魅力があり、すでに食べたことがあるのにも関わらず思わず手に取ってしまう。
ハジメも同様に釣られたことがあるが、実際に食べてみると味は普通だったのでとても不思議だ。
これはおやつ時に限らず普通の食事の時も同様に起こっているが、助かっている部分もある。
自分で山菜を採ってくる割には野菜を食べたがらないクロがイモコのおかげで野菜を食べるようになったので少なくとも悪いことではないと思う。
イモコ曰く別にあやかしの力とかを使っている訳ではないとのこと。単純にイモコの食べ方が人を惹きつける位魅力的だったということらしい。
ふとデパートの物産展にイモコを置いておいたら凄い販促効果になりそうだなと思った。