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5:イモコ



 ハジメが駄菓子屋を開いてから一週間。


「ハジメ、ハンコちょうだい」


 午後三時、クロがスタンプシートを持って駄菓子屋にやってくる。


 ハジメは駄菓子屋を開く時間を午後三時と決めていた。おやつの時間というのもあるが、駄菓子屋に人が集まるのがこの時間というイメージがあったからだ。


 クロが小学生位の見た目をしているのでついそれ位の子に合わせた対応をしてしまう。



「はい、今日は何にする?」


「ん、いつものお願い」


 クロが選ぶのはいつもの駄菓子。サクサク音をたてリスのように食べていた。


 ハジメは横で色々な種類の駄菓子を食べているがクロがそれらに興味を示す様子はない。


 駄菓子屋に並ぶ駄菓子の種類はなるべく偏りのないようにしているが、それでもハジメの好みのものが多い。その中でクロが気に入ったものが見つかっただけでも良しとしよう。




 翌日。


「ハジメ、戻った。あとお土産」


 いつものように朝の散歩から帰ってきたクロ。どうやら何かを拾ってきたようだ。


 このように何か拾ってくるのは珍しくない。山菜や野草など食べられそうなものを採ってきてくれるが今日は違った。


「え、タヌキ?」


「ん、落ちてたから拾った」


 クロが抱えていたのは一匹のタヌキ。


「それ生きてるの?」


「わからない」


 クロに抱えられたタヌキはぐったりとしている。生きているのかわからない。


「ハジメ、食べる?」


「んー、タヌキって食べられたかな?」


「た、食べないでください〜」


 ぐったりしていたタヌキが突然叫びクロの腕の中からすり抜け地面に着地すると、


「ど、どうか命だけはご勘弁ください〜」


 土下座して命乞いをした。




 タヌキはクロと同じくあやかしで名前はイモコという。


 裏山を彷徨っていた所、クロの気配を感じ死んだ振りをしてやり過ごそうとしたらここに連れてこられたそうだ。


 イモコは人のいない所を転々としてこの裏山にたどり着いたそうだが、最近ハジメがここに移住したことに気づかなったらしい。



「すでに先客がいたとは知らず、すみませんでした。すぐにここを出て行きますね」


 ペコリと頭を下げ去ろうとするイモコ。


「待って。イモコ、ここにいればいい」


「え?」


 クロがイモコを引き止める。


「ハジメ、いいよね」


「うん、イモコがよければいてもいいよ」


「いいんですか?」


 家は広いのでタヌキが一匹増えたところで特に問題ない。それに意思疎通ができるので手がかからないのもいい。もふもふしてるのもポイントが高い。


 などと思っていたら、


「で、でしたら人の姿の方がいいですよね。えいっ」


 ぽんっ、と煙に包まれるイモコ。


「み、皆さんこれからお世話になります」


 姿を現したのは赤茶の癖毛に芋ジャージを着た少女。その格好と佇まいはザ田舎の少女、この場所にマッチしていた。


「ん、よろしく」


「あ、ああ。よろしくイモコ」



 こうして新たなあやかし少女がハジメの家の住人として加わった。






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