4:駄菓子屋
「よし、こんなもんかな」
作業を始めて一月弱、ついに納屋の改装が完了する。
物置小屋として放置されていた納屋の中はたくさんの駄菓子が並べられていた。
外観も綺麗に塗り直され看板が新たに飾られている。看板には『だがしや』とひらがなで書かれていた。
ハジメが作っていたのは駄菓子屋だった。
店内は所狭しと駄菓子で溢れていて、通路は確保してあるが狭い。だがこの狭さが良いのだ。ハジメが目指していたのは昔ながらの駄菓子屋。
外にはすぐに駄菓子を食べられるようにベンチを用意した。
満足げに店を眺めていると、
「ハジメ、戻った」
昼食後散歩に出ていたクロが戻ってきた。
「クロ、おかえり。ほら見て、やっとできたんだ」
「?」
「駄菓子屋っていうお店だよ」
「駄菓子屋?」
クロに駄菓子屋について説明する。
「!お菓子のお店。凄い」
「これ渡しておくね」
クロに渡したのは一枚のスタンプシート。
「これは何?」
クロにスタンプシートの使い方を説明する。
ハジメが渡したスタンプシート。これは駄菓子屋で使える交換券のようなものだ。
クロがお手伝いをする毎にハンコが一つ押される。ハンコ一つにつき駄菓子屋にあるお菓子から好きなものを三つ選べるシステムとなっていた。クロが普段から行なっている裏山の散歩も対象に入る。
「それじゃあ早速ハンコ押そうか」
「あ、猫の顔だ」
スタンプシートに猫のハンコを押すハジメ。
「早速中に入ってみようか」
クロに店内を案内する。
「凄い、お菓子がたくさんある」
所狭しと並ぶ駄菓子に圧倒されるクロ。
「何か食べたいものはある?」
「ん、わからない」
今まで猫だったクロにとってここにあるものは未知の食べ物ばかり。どれから手をつけていいのかわからないのも当然だ。
「それじゃあ一つずつ味見してみようか」
ハジメは棚からいくつか駄菓子を選ぶ。それをクロが一つ一つ試食していく。
目を見開いてくわっと目を見開いたかと思えば、酸っぱいのを食べ驚いたりと様々なリアクションをしていた。
「気に入ったのはあった?」
「ん、サクサクした棒のやつ」
いくつか試食したクロが選んだのは棒状のスナック菓子、コンポタ味を気に入ったようだ。
国民的駄菓子でサクサクした食感が売りだ。クロはこのサクサクが気に入ったらしい。
「ハジメ、全部これにする」
「え、全部同じのでいいの?」
「ん、問題ない」
余程気に入ったのかクロは選べる分全てをそれに決めた。
ハジメとしてはもっと色々な種類のお菓子を楽しんでもらいたいと思っていたのだが、クロが喜んでいるのでよしとすることにした。
この駄菓子屋はまだ開いたばかり。これからいろんなものに興味を持ってもらえればいい。
外のベンチで仲良くおやつを食べるハジメとクロなのだった。