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episode1-1 はじまりの予感

俺は今何処にいるのだろうか…。

辺りを見渡す限りの草原と、それを掻き分けるようにして、何処に辿り着くのかも分からない一本の小道があるだけだ。


「困ったなぁ…。」


この、途方もなく続く小道をひたすら歩かなければならないという現実に、思わず溜め息が溢れた。




どうして俺はここに居るのだろうか…。


確か俺は、何時もと同じ時間に家を出て会社に向かう為電車に乗り、会社の最寄り駅で降りた。

…のだが、そこは、何時もの見慣れた風景ではなく、一面に広がる大草原だったのだ。

間違えた所で降りてしまったのだと焦り、急いで電車に戻ろうと後ろを振り返った俺は、愕然とすることしか出来なかった。


「電車が…ない…。」


焦って気が動転した俺は、草原をひたすら走り、見慣れた景色を必死に探す。

いくら探しても草原以外見当たらず、そのうち体力も無くなり、その場に膝から崩れ落ちた。


どうしようどうしようどうしよう…。


考えれば考えるほど、今の状況が理解できず焦るばかりで、正気を保てそうにない。


額から大量の冷や汗が流れ落ち、スーツの下に着たカッターシャツがじっとりと湿っている。

カタカタと震えが止まらない両手を抑え込むようにぎゅっと手を握りしめる。

どぐどぐと嫌な音を立てる心臓を落ち着かせるため、深呼吸を繰り返す。

そうしているうちに、だんだんと呼吸も落ち着いてきて、少しだけ冷静さを取り戻すことが出来た。

頭が冷静になってくると視野が広くなり、先程までは目の前しか見えていなかったのだと思い知った。

よくよく遠くを眺めていると、草原を掻き分けるように一本の細い道が見えた。


もしかすると、あの道を辿れば何処か町に辿り着けるかもしれない。

そう思った俺は、取り敢えずその小道へと歩を進めた。


(……っとその前に会社に電話しておこう。)


今から会社に向かおうとしても、自分が何処にいるのかも分からない為、遅刻する旨を電話することにした。


左手に持った黒い革の手提げカバンを開け、スマホを探す。

スマホを起動させ、会社に電話をかけたのだが、電話が繋がらない。

恐る恐る電波状況を確認する。


「うわぁ…。圏外か…ここ…。」


そうすると?ここは電波が届かないくらい田舎で誰とも連絡をとることが出来ないということか…。


(…………ん?もしかして詰んでるのでは?)


いや、いやいやいや。まだ諦めるのは早いぞ俺。

電波が届かなくてもGPSは作動するだろう。

自分が何処にいるのかさえ分かれば、何かしら対策が出来る。

電車に乗っていた時間を考えてもそこまで遠くにいっていない筈だ。

自分の位置情報を確認するため、マップを開く。

GPSは正常に作動するようで、マップが現在地を示していた。

画面を拡大させ、自分が今何処に居るのか確認する。


「…………レッドウィングビレッジ?」

レッドウィングが赤い羽根……赤羽?

ビレッジは、村だから…。

赤羽村?


何でカタカナで表示されているんだろう。

俺の住んでいる市の周辺にそんなこ洒落た店みたいな名前の村なんて無かった筈だ。

それとも、自分が知らなかっただけで新しく作られた村なのか、それとももしかしたらレジャー施設のようなものなのかもしれない。


その考えに至った俺は、取り敢えず小道のある方へと足を進めた。


小道まで辿り着いた俺は、その横に木製の看板があることに気付いた。

そこには『ようこそレッドウィングビレッジへ!』と、印刷されていたのではなく、彫刻刀のようなもので文字を彫っているようだ。


取り敢えず誰かしら人が住んでいそうで、少しだけ胸を撫で下ろした。


アスファルトで舗装された道よりは安定していないが、先程までの草を掻き分けるように進んでいた時とは違い、普通に歩ける。


これならすぐにでも村に辿り着けるだろうと、たかをくくっていた少し前の自分に忠告したい。そんなに道のりは甘くないぞと。

何せ、看板を見つけてから一時間は歩いているのだが全く村が見えてこないのだ。


そろそろ足も疲れてきた。

少しここら辺で休憩でもするかと、小道にあった、人が座ることの出来るくらいの大きさの岩に腰かける。

ほっと一息ついていると、バーッバーッバーッと、スマホから災害時に鳴る着信音のようなものが聞こえ始めた。


少しだけ嫌な予感がしたが、恐る恐るスマホを起動させると、先程のマップから通知が来ていた。


通知を開くと『緊急速報 現在地周辺にワイバーン一頭確認 至急避難もしくは、討伐準備を。』と表示されていた。


「……ワイバーン?」


ワイバーンって、ゲームとかファンタジーの世界に出てくるあのワイバーンのことか…?



次話、明日12時投稿予定です。

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