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第5話

 左右の眼の付け根から伸びている触手を振り回して不機嫌になっているサースを見て、クラムはもしやと思い聞いてみました。

「あの宇宙船に乗っている天文学博士は、君の恋人だったのかね?」

 クラムの言葉に、サースの触手の動きが止まりました。触手を床に落としてからサースはボヤキながら答えました。

「実は、そうなんです。友人として一緒に天文学の仕事をしておりましたが、本当は一緒に産卵したかったです」

 この星のカタツムリは、全てが雌雄同体。

 そのため、サースが恋人と思っている天文学者に雄雌の区別はなく、当然サースにも雄雌の区別はない。クラムも。

 クラムの鼻歌が止まりました。サースを気の毒に思ったからです。

「相手に思いを告げて産卵しておけばよかったんじゃないのか」

「話はしました。しかし、お互い繁殖期になる前に宇宙船が完成してしまったので。宇宙船の完成と共に、私たちの関係も自然消滅してしまいました」

 仕事中という事もあり、別れの辛さを感じているはずのサースの表情に動きはありませんでした。声だけが悲しげで、隣で仕事をしているクラムは、どう言葉を掛けていいのか分かりませんでした。

「そうか……」

 クラムは、静かに短く答えるだけが精一杯でした。

 地下に掘られた空洞は、ピンポン玉の宇宙船に合わせて球状になっておりました。

 カタツムリは服足というものがあるので、多少のデコボコも難無く貼り付いて、壁や天井を移動することができます。

 空洞の壁や天井には、宇宙船建造の技術者であるカタツムリが無数に貼り付いて作業をしておりました。

 クラムも作業の確認のために移動して天井に貼り付く事もありまた。各担当の責任者と意見を交わし、必要があれば次の宇宙船のために図面の変更を行っておりました。

 宇宙船の建造現場にいる時、常にクラムの隣にはサースもおりました。二人はコンビを組んでいつも一緒に仕事をしていたのです。

 サースはクラム以外には恋人と別れた悲しみを見せませんでした。

 なぜならサースはクラムの事を友達以上に思っていたからでした。

 そしてそのサースの思いが、今後のクラムにどう影響してくるのか、クラムはまだ気付いていませんでした。

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