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悪役(の僕)なら法に触れない限り怠慢は働きません故(黒笑)  作者: 旧プランクトン改めベントス
パンケーキ~層を重ねる度に増える贖罪(食材)~
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0 プロローグ

 私の前には、第二王子()()()人、そして妹()()()人、おそらく甥と姪に()()()人、そしてその他諸々の人達が頭を下げていた。


 「な、なあ…アリーシア、元婚約者としてそのぅ…どうにかしてくれ!」

 「どうにかしろと仰いましても…」


 「ぷぷっ、お嬢様のお名前を復習したんですかぁ?『ALOISIA』のたった7文字のつづりすらアロイジアって声に出して覚えていらっしゃった方が、まぁ~っ、成長されましたねぇ!31歳ですごいですねぇ!」


 「そこの化け物煽り厨をどうにかしろと言ってるんだ!」

 第二王子だった人は私の隣の男を指さして怒りの形相で言った。


 「あいつのせいで人生めちゃくちゃだ!」

 「これからも人生は続きますよ~?まだ31歳でちゅもんねぇ?」


 「この悪魔っ!ちょっとお姉様!そこの万能クズをどうにかしてよ!」

 妹だった人が…私を姉とは思えないって縁切った人が「お姉様」と私を呼んで、旦那と同じように隣の男を指さして鬼気迫る表情で言った。



~ ~ ☆☆☆☆☆ ~ ~



~まだ彼が光属性だった頃に時を戻そう~


 明日は私の婚約者であるアレクサンダー殿下のお誕生日だ。

 第二王子ともなれば豪勢な誕生日パーティーとなるので前日はその準備で忙しいのだが、殿下に呼び出されたので、私は私付き使用人のアルバンとともに参上した。


 ただ…王宮に入った時から出くわす人々全員の態度がおかしい。いつもならにこやかに挨拶を返してくれるのに、何だか同情するような目を向けてくる。


 「何か今日、変な恰好をしているのかしら?」

 ああ、こんな事なら新しいドレスなんて着てくるんじゃなかった。いつものよそゆきのドレスで良かったじゃん。


 「いいえ、お綺麗ですよ。お嬢様は何もおかしい事なんてございません。」


 「そう…虫とかホコリが付いていたら教えてくださいね。」

 「大丈夫だと思いますよ?」

 アルバンが私の背中側も見てくれたけど、本当に何も無いようだ。



 そして殿下のお部屋に着く。

 ドアの前にいた番兵2人が私を見るなり気まずそうな顔を必死に隠して笑顔を作った。


 「こんにちは、アリーシア様、アルバン様。」

 何か声が震えているんだけれど…気のせいかな。確か、いつもなら彼は人懐っこい笑顔を向けて明るく挨拶してくれるのだけれど。


 「こんにちは。殿下に呼ばれたので参上しました。入ってもよろしいでしょうか?」

 「え、ええ…」

 彼は紐が1本切れた操り人形のようにコクコクとうなずいた。


 「失礼いたします、アレクサンダー殿下。アリーシア・ライターでございます。」

 私がドアの外から声を掛けると、珍しく向こうからドアが開かれた。いつもならアルバンが開けるのに。


 「っ!」

 しかし、ドアを開けたのは…よく知っている顔だった。ちなみに殿下ではない。女だ。


 「ベッティ…どうしてここに?!」


 私の妹ベッティことベティーナは確か友達と出かけるとか言って午前中からいなかったのだ。だから私はベッティの分まで家の業務をしていて死ぬほど忙しかったのだけれど。


 アルバンを見ると、彼も固まっていた。私と目が合うと、彼はブンブンと首を左右に振った。アルバンの動きに合わせてなぜか番兵も共鳴するように同じ動きをしていた。


 「待ってたのよ、お姉様。」

 「い、妹様…お友達と出かけられたのではなかったのですか?」

 必死に声を絞り出すようにアルバンが言った。


 「あら、その用事ならお昼前に終わったわよ。」

 「そんな!旦那様も奥様もお嬢様も用事がある妹様の代わりに今まで働き詰めだったのですよ!殿下の命令があったので参上したのですが…」


 ベッティにアルバンが詰め寄るのを良い生地の袖に通された腕が止める。


 「そこまでにしておけ。」

 「ハッ、失礼いたしました、殿下。」


 アルバンが1歩下がって殿下に会釈した。私も会釈する。


 「顔を上げろ。」

 「はっ。」


 殿下はプッと噴き出した。

 「しっかし、いつ見ても腹が立つ顔だな、アロイジア。」

 「アリーシアでございます。」


 「どちらでも良い、やたら長いお前の名を綴るのが煩わしいのだ。」

 はい?あなたこそアレクサンダーじゃないですか。


 というか私の名前を書く時、今までアロイジアと声に出して(つづ)っていたのか…どんだけ記憶力無いんだ、この人。まあ、ここで否定しても水掛け論になりそうだからやめる。


 「ところで殿下、ご用件の前にとりあえず妹を強制送還させますので…ご迷惑をおかけしました。」


 いきなり王宮に乗り込むだなんて厚かましいにも程がある。ただでさえ忙しいのに、これに不敬の後始末なんてきたら私達は過労死してしまう。


 「いや、その必要はない。お前を呼んだのもベティーナの事についての用事だ。」

 「はい。」

 ひぃ~っ!そりゃ「腹立つ顔だ」って仰いますよね!絶対後ろでアルバンも顔が引きつっているだろう。


 ベッティ、何をやらかしたの…?昔から自由奔放な子だとは思っていたけれど、やんちゃが過ぎてケンカを売ったらいけない相手を怒らせるとか何してくれてんの?しかもこの忙しい時期に!


 「まあ良い。座れ。」

 「は、はい…」

 私とアルバンはその場に正座した。パニエがぶわっと浮いて膝小僧が見えてしまうはしたない恰好だが、今はそれどころじゃない。土下座の準備に入る。


 「何をしているのだ?ははっ、とうとう頭がおかしくなったか?」

 「お姉様もアルバンもどうしちゃった」

 「ベッティ、あなたも座りなさい!そして殿下に土下座なさい!」

 「はあ?何を言っているのかしら?」


 うちの妹がここまで非常識だなんて思わなかった。


 「ベッティ、お願いよ…座ってちょうだい。」

 「妹様…」

 下手したら爵位はく奪まであるから早く!


 「お前は何を言っているのだ、アロイジア?」

 だからアリーシアです。


 「殿下…この度は妹のベティーナが多大なる無礼を働きまして」

 「アレクサンダー、何をしているのですか!!」

 その時、聞きなれたお声がした。

 振り返ると、皇后陛下と第一王子のクリストフ殿下と第一皇太子妃のカルロッタ様だった。オワタ…。


 殿下だけなら上手くなだめすかしてワンチャン丸めこめそうだったけど、ここまで王族が揃ってしまってはそれも無理だ。

 私はアルバンと共に灰となって消えそうだ。


 「っ、アリーシアとアルバン、何をしてるんだ!」

 クリストフ殿下が私達に駆け寄って私を引き上げた。


 「いいえ殿下、これは私達に非がございます!」

 引き上げられた瞬間、私はまた床に正座した。


 「アリーシア様…一体どうなされたのですか。」

 義兄妻になるはずだった方がスカートを整えてからしゃがんで私の肩を抱いた。


 「カルロッタ様、あなたが優しく相談に乗ってくださった日々を私は忘れません。今までお世話になりました…」

 「ちょっと、アリーシア様?!きゃっ、白目むいてる…」


 「アルバン、どうしたんだ…お前が何も言わないなんてらしくないぞ。あっ…まずい、瞳孔が開いてる!おい、医務室に連れて行くぞ!」


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