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お金がないんですが…

「なんか……この世界って、私が思ってたのと違うみたいですね」


 風花がそう言うと、おばさんは不思議そうな顔をしながらもうなずいた。

「あ、ごちそうさまでした。…今日は本当にお世話になりました」

「いえいえ、こちらこそこんなもので満足してもらってありがたいよ。…そういや、あんた、名前は何て言うんだい?」

「えっと、風花っていいます」

「フーカ?珍しい名前だねえ。あたしはサリア・メルリス。また何か縁があったらよろしくね」

「はい!」


(優しい人でよかったなあ)

風花はおばさんの家を後にし、街へ向かった。


-------------


(えっと、町はこっちだっけ?)

周りを見渡すと、周りには畑が一面に広がり、遠くに山々が薄く見える。一本道の先にはかすかに街が見える。

(うぅ、これは遠そうだな……)

結局、街に着くころには日が暮れかけていた。


(あの魔法、本当に使えるのかなー。一回試してみたいな)

道中、風花はあの轟炎魔法を使ってみたい衝動に駆られていた。

(でもこの辺で使ったら農家の人に怒られそうだし、人のいないところじゃないとだめだよね)

風花はおばさんが山の向こうに海があると言っていたことを思い出した。

(海辺とかなら大丈夫かな?)



 もう2、3時間は歩いただろうか。風花は街に着き、大通りへ出た。

 通りは舗装されておらず、商店が立ち並んでいて、人や馬車がまばらに行き来している。

 まずは今日泊まる場所を探さなきゃ。そう思ったが、周りにホテルのような建物は見えない。

 風花は勇気を出して通りかかった男の人に声をかけた。

「すいません、…あの、この辺に泊まれる所とかありませんか」

「んー、そこの通りをまっすぐ行くと宿があったと思うよ」

「あ、ありがとうございます!」

 この通りは民家が多く、街灯もほとんどない。すでに日は沈み、あたりは薄闇に包まれる。

(うーん、なんか暗いし不安だなあ…)


(あ、あれが宿かな?)

風花は宿屋らしき建物に入った。

「いらっしゃいませ」

風花は受付で鍵をもらい、部屋に入った。

(ふう……泊まる場所が見つかってよかった)

風花はほっと息をついた。

簡素で広くはない部屋だが、割ときれいだ。

(んっ、なんだろこれ)

 照明は不思議な形をしている。透明な箱のようなものが光を放っているが、コンセントなどはなく仕組みは謎だ。

 風花が謎の箱についた棒を押し込むと、明かりは消えて真っ暗になった。

 風花はこちらの世界で初めての夜、これからの生活に少しの不安を抱えながらもぐっすり眠った。


--------------


チュン、チュンチュン。

風花は小鳥のさえずりに目を覚ました。

「うー、ママー、あれ?」

風花は状況を思い出すのに数秒かかった。

(あ、そっか、ここ…)

風花は二度と会えない家族のことを思い出し、ふと涙をこぼした。


風花は静かに部屋を出た。


風花は受付の人の言葉に焦った。

「550ルマになります」

550…あれ、私、お金持ってたよね?

ポケットには銀色の硬貨が4枚。

「あの…これしかないんですけど…」

風花はそれを1枚渡した。

「ん?これって…」

受付の人は戸惑いながらも銀貨を受けとった。どうやら足りたようだ。

風花はホテルを後にすると、大通りの方へ向かった。

(はー、そっか、お金かあ)

このままではすぐにお金が尽きてしまう。

(働かないとダメなのかなあ)

風花はあてもなく通りを歩いていると、求人の張り紙を見つけた。レストランの接客らしい。


 さっそくその店に入った。

「いらっしゃいませ」

「いえ、あの、入り口の張り紙を見て、、ここで働きたいんですけど…」

そう伝えると、カウンターの奥に案内された。

「私が店長のニルコフだ。よろしく頼む」

50代ぐらいの、ひげを生やした男性だった。

「よろしくお願いします」

「仕事のことは先輩のマリーさんに聞くといいよ」

すると奥から私より少し年上らしい女の人がやってきた。

「私がマリー。よろしくね」

「わ、私は風花といいます。よろしくお願いします…」

店長もマリーさんもいい人で、丁寧に仕事を教えてくれた。

他にも、私はこの世界のことをマリーさんにたくさん聞いた。

「あの、海に行くにはどうしたらいいですか?」

「海?…汽車に乗れば4駅ぐらいで着くと思うけど」

汽車……?この世界の汽車とはいったい何だろうか。

「あの、その汽車って、コウショウ機関ってやつで動くんですか?」

「うん?そうだけど」

やはりか。その機械は何にでも使えるのだろうか。

「そのコウショウ機関って、どういう仕組みなんですか」

風花がそう聞くと、マリーさんは一瞬悩んだ後に答えた。

「うーん、私も細かくは知らないけど、光晶石っていう魔力のこもった石で動く機械だよ」

なるほど、光晶石という鉱石をエネルギー源としているのか。

「うちのお兄ちゃんならもっと詳しいと思うけどなあ」


「いらっしゃいませ」

風花は接客の仕事を担当した。夕方になると人が増えて忙しくなりはじめた。

「じゃあ、このトルゲニッツェってのを」

聞いたことのない料理だが、これは人気メニューらしくよく注文された。


そうして数時間、その日の仕事は終わった。

「二人ともお疲れ様。はい」

店長は二人に1日分の給料を手渡した。

風花はお札が1枚と、大小の硬貨7枚を受け取った。

「あの、これっていくらですか」

風花は小声でマリーに尋ねた。

「え、880ルマだよ」

880……昨日と同じところに泊まれば330ルマしか残らない。厳しい生活だ。

「風花さん、家、ないんだっけ?」

「はい……気づいたら、畑に倒れてて」

マリーは奇妙に思ったが、

「そっか……もしよかったら、今日はうちに泊まっていく?」

風花はその言葉に感激した。なんて優しい人なんだろう。

「え、そんな、いいんですか」

「うん、住むとこは明日探せばいいから」

そうして風花はマリーさんの家についていった。


 その夜はマリーさんとたくさんおしゃべりした。

 マリーさんは山の向こうの村から、お兄さんと一緒にこの街に来たそうだ。お兄さんは光晶技師として工場で働いていて、今日は本社に出張に行っていて留守らしい。

 

「その杖、きれいだね。もしかして風花さん、魔法使えるの?」

「は、はい、一応」

「え、すごーい!一回使ってみせてよ」

マリーは魔法に興味津々のようだ。

こんな狭いところで轟炎魔法を使えば大惨事だ。

「えっと、…ここじゃ使えないから、また今度見せるね」


2時間ぐらいは話しただろうか。

「そろそろ寝よっか」

「そうですね」

マリーは例の光を放つ謎の箱のスイッチを切ると、あたりは完全に闇に包まれた。

風花はその照明の仕組みが気になったが、眠かったので明日聞こうと思った。


「じゃあ、おやすみなさい」

「おやすみ」

次回、ついに風花が轟炎魔法を使います。しかし、そのせいでとんでもない問題に巻き込まれ…

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