お仕立て モンゴメリーカラーのジャケット 6
突然現れた巨躯にニアはポカンとした顔をして私の服の袖口を指で引っ張った。少し斜めになった私の耳元で小さく訪ねる。
「リゼ、知り合いなのですか?」
「う、うん。村にいたときにお世話になったお医者さん。
助けてくれて、あ、ありがとうございます。マリウスさんはどうしてここに?」
大きい熊みたいな人に少しまごつきながらお礼を伝えると、マリウスさんが町でと変わらぬ柔和な笑みで答えてくれた。
「薬の入荷が滞っていまして、先生に薬の口利きを頼みに来たところなんですよ。
あと、この熊みたいなやつが仕事がなくて糊口に喘いでいたから、傭兵への口利きも依頼しようと思ってね」
「悪かったな」
熊のような人は茶色い髭と長い髪で目すら良く見えていないのだが、マリウスさんと気安く話しているから既知の仲なのだろう。
少し安堵し、私は肩の力が抜けた。
ニアは、脇に置いた箱を再び手に取り持ち上げる。
「私は軍服を届けに行ってきますから、リゼは先にいくのです。リゼをよろしくお願いするのです」
「え、ニア、大丈夫?」
「平気なのです。また破落戸にリゼが絡まれると厄介なので早く行くのです」
そういうと、ニアは半円のような入り口に向かい…箱の角を円の弧にぶつけてよろめきながら建物の中に消えていった。
「大丈夫かなあ…」
「あの嬢ちゃんは強いし大丈夫だろう」
「それに軍部に入りましたから、大丈夫ですよ。また人が集まらないうちに行きましょう」
マリウスさんと熊みたいな人に促され、ニアが消えた入り口を気にしつつ、私はその場を後にした。
…回りの人が遠巻きにしている気がするけど…気のせいじゃないわね…
辺りを見ると、明らかにチラチラ見てくる街の皆さま方たちばかり。お店から出ないでこちらを伺ってますよ?
「リゼさんはこの後どうするんですか?」
「お品ものを届けに公爵家に行く予定があるんです」
マリウスさんに訪ねられて、手にした袋を持ち上げる。よかった、袋は無事だったようだ。
私の言葉を聞き、マリウスさんは後ろを歩く熊のような人に振り返る。
「さっきはこの格好が助かったけど、さすがに公爵家にはこの格好は無理だね。
…そろそろ身支度整えておいでよ」
「そんな金ねえよ」
ぶっきらぼうに答える熊のような人にさすがにこのままでいさせると私も視線が痛い。肩の辺りまで小さく手を上げる。
「あ、あの…うちで身支度整えますか?お礼じゃないですけど…寄り道したらうちに行けますし」
「マジか、やった!恩に着るぞ」
熊みたいな人は近づくと私の上げた手を両手で握った。ちょっと強い力でごつごつした手だけど、暖かい手だった。
「こら、リゼさんの手をいつまでも握ってない。
ごめんね、こんな成りしてるけどルシウスは俺の弟で、悪い奴じゃないから」




