お仕立て モンゴメリーカラーのジャケット 4
フォックステールにレースを縫い付け、仕上げ終えた翌日。
バルテン商会で梱包を終えて外出しようとしたとき、ニアが上の階からたくさん箱を下ろしている場に遭遇した。
「ニアもどこかにお出掛け?」
「私は傭兵のジャケットを運びに被服廠に行くのです」
そう言って箱を開け中のものを見せてくれた。折り畳まれた生地は、少しづつ色のずれた紺の生地だった。
ジャケットとのことなので、縫製済みなのだろう。今出したもので5着ぐらいだろうか。中にはまだ入ってるようだ。
箱は3箱はある。
「その箱全部服なの?」
「そうです。かなり今回は大規模らしく、傭兵の数も多いので、いろんな店に注文して集めているそうなのです」
ニアはもう一度箱を閉じる。その合間に何かの拍子に力が入ったのか、箱にミシッと音がなった。ニアは慌てた様子で手を離したが、の蓋が少しひゃげているのは、気のせいではなさそう。
ただ、平静を装い、その上に箱を重ねるニアに付き合うことにした。
「被服廠って凄そうね。これ、バルテン商会からだけでしょ?他にもお店あるのよね?」
「そうです。だいたい50店ぐらいはあるはずです。」
「じゃあ大体これの50倍…か…ニアの方が大変だろうから、被服廠に行くの、私も手伝うわ。行こう?」
私も支度をし終えているので、扉を開けたりして、狭い商会の中ニアが通りやすいようにする。
階段を降り、商会を出て道を歩き出した。小さいニアの前には身長を越える箱。私は誘導しながらニアと歩を進めた。
「それにしてもたくさんの服を納めるのね」
「被服廠は服だけでなくて、帽子やバックとか、武器以外はみんな扱いますよ。今回は帽子もあります」
ニアが上の方を見やると、箱の重なりが傾いだ。慌てて2人で支える。しばらくしてぐらぐら揺れが落ち着いたので、また歩き出した。
「そんなに納められるなんて、じゃあ広くて大きそうな場所ね。あれ?でもそんなところ、街中でも見てないような…」
この街はお椀をひっくり返したような山形。でも、そんなに大きい建物回りから見えた覚えがない。
「厰は被服廠だけではなく、造兵厰もありますから、外から小さく見せかけてるだけです。
この街はいろんな所に戦いの後があるのですよ」




