お仕立て モンゴメリーカラーのジャケット 3
「そうそう、うちにも依頼来てたわよ。弟見守りたいならリゼ行く?」
窓の外にたなびく旗を見ながら、変な気分でいると、ヴォルフラムが声を掛けてきた。
振り替えると、手を動かしレースの計測と裁断を続けるヴォルフラムが声だけ掛けてきている。
「え、怖いから嫌です」
「だから、後方だから。
うちに来てるのは洗濯部隊と裁縫部隊としてだったかしら?結構ハードだけど、お金は稼げるってもっぱら評判で、若い子に人気よ。年配の方も参加してるし。
ニアは力があるから洗濯で行くって話していたわね、確か。
裁縫は、傭兵に支給されるジャケットや騎士団の服の直しがメインのはずよ。だから、怖くないってば」
呆れたような声と視線だけ投げてくると、ヴォルフラムは計測を終えたのかメジャーを肩に掛けて、近くの高さのあるスツールを引き寄せ座る。
「本当に物見遊山…」
私もフォックステールを縫っていた椅子に途中つまづきながら、よろよろ戻る。
「だから心配しなさんなって。それでも戻したいなら、既に話し行ってそうだけどクルトに言っとけば?
見つけ次第返させてって。急げばあと数日でフォックステールも出来上がるでしょ?届けついでにお願いしたら?」
フォックステールの脇には計測の終わったレースの山。確かにこれ終えて納品ついでにフォクツ公爵家に行けば、クルトさんにあって頼めるかも。だめでもユーディト様に頼めば伝言してくれるかもしれない。
なんだか視界が開けたような気分になった。レースも白さが眩しい。
「それ良い考えかも!ありがとう、ヴォルフラム!」
「…つまりは、ちゃちゃって仕事しろってことよ。手、動かしなさいな」
山になった白いレースをヴォルフラムが手に取る。細いレースに間隔を置いて蝶のモチーフが入る。
これは、モチーフが重ならないように、ずらしながらいかなきゃいけない、頭使うもの…
「……はい、頑張ります…」
「頑張んなさいよ、アンタ、空元気っぽい所と運針の早さが取り柄なんだからさ」




