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お仕立て フォックステール その15

更新遅くなりました。

なかなか気持ちが普通に戻らず、日常生活は出来るものの、執筆に至りませんでした。


少しづつ、今の時勢を日常として受け止めつつ、執筆していきますね。

 目の前に甘い雰囲気が流れているのをお構いなしに、侍女さんが朝食が運んでくる。


「友人や侍女がいる前では止めてくれないか?」


 さっきまで余裕綽々だったユーディト様がクルトさんに手を握られ、腰が引けて…壁元まで追いやられている。

 声が心なしか上擦ってる。

 私は声を出さずに『あのお二人どうしたらいい?』と侍女さんにアイコンタクトすると、侍女さんは爽やかな笑顔を返してくれた。


「お気になさらないで下さい。毎朝の光景なんです」


「いや、もう少しクルトに注意くらいしてくれ、クララ!君はクルトの乳母の娘だろ!」


 侍女さんは、私を2人から少しはなれた席を案内してくださって、目の前に朝食を提供してくれた。

 お皿に盛り付けられたスクランブルエッグは黄色が濃くて、それでいてふんわりミルクの香りがしている。

 続いて提供されたのは厚切りのトーストで、既にバターを乗せたまま焼いてあるらしく、きつね色の中に白い柔らかそうなパンの身が…これ、バターが溶け込んでますよね!?

 バターの香りは私のお腹をたちまちぐーっと鳴らしてきた。

 そのあともユーディト様がクルトさんに手を握られながら何か言っていたが


「あちらは景色と思っていてくださいませ。フォクツ公爵家の日常ですので。

 それではごゆっくり鑑賞しつつお召し上がり下さい」


 そういうと、侍女さんは下がっていった。

 …微妙に視線に私困りますが、これはお芝居見ている気分でいろってことかな?



 壁に寄せられて、ユーディトは何とか逃げようとするが、クルトが手を離さず、叶わないままだった。


「もう少し構ってくれたら、毎朝やるの止めるよ。

 ユーディトは騎士団辞めてからあまり俺に構ってくれなくて、寂しい」


 クルトはユーディトの肩に額を預ける。

 こう言われると、ユーディトも無碍には出来ずクルトを受け入れるように自由がきく右手で、子供をあやすようにクルトの肩をさすった。


「…軍の後方部隊にでも置いてくれたら良いだろう?」


「怪我をしないか心配だから、軍からは離したかったんだよ」


 クルトが上目遣いにユーディトを見る。

 クルトの空いた左手がユーディトの腹部を擦る。ユーディトは息を呑んだ。…腹部の傷が引き連れたように疼く。

 クルトとユーディトの視線が合わさり、途端にユーディトは負けた、と思った。

 元々勝ち目はない。自分が仕えるべき主であるから。


「じゃあ、軍は辞めておいてやるから、私の好き勝手にさせて貰うからな?

 あと、リゼのこと、送ってほしい。かわいい友達だから、丁重にな」


 精一杯、ユーディトはわがままに聞こえるような声を張り上げると、クルトは破顔をしてユーディトの側を離れたのだった。


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