お仕立て フォックステール その11
「しかし、何もなくとも、縄が発火したな…もしかしたら、リゼの力はい…」
「あれ?ユーディト様!?」
不意にユーディトの声は途切れた。
ユーディトがいたら心強かったが、声が途切れたからにはしばらくはまた自分だけで進むしかないのだろう。
私と女の子の前に、人影が来た。朝日がその人によって遮られる。その人は輝いて見えた。
「君の行ったこと、受けてきたこと、全て聞いた。
それを承知で君の魔法の力を私に貸してほしい。代わりに君の身の安全を保障しよう」
輝くように光を背負った、公爵の姿を信じたかったが、なんだか違和感を感じた。
どう言えるか…本当に身の安全を保障されるのか。この細い肩の小さい子を守ってくれるのか。
公爵の顔が逆光で見えず、逆に影を持ってるように思えてしまった。
綱を首に掛けようとしていた人が何やらしだした。女の子を何重にも掛けていた鎖をはずそうとしているのを見て、おもわず私は離れて数歩下がった。
その景色を写し出している布に火矢が当たった。たちまち景色を写した布が焼けてチリチリとし始めた、焼き跡が広がる。布が焼けて行くにつれて景色が変わり行く。
辺りは火事の後か火が燃えているが、私には特に熱さは感じられなかった。
だからか、平常心をもって、まるで絵本を見ているかのように、フィクションとして捉えられた。
「私があの子から離れると景色が変わっていくのね…」
私は両手に残る、あの子の肩の感覚を思い出す。
それから辺りを探した。
火矢が刺さり、木が燃えているこの辺りには見えない。
「今度はどこ?」
とりあえず歩きだした。あの子がどこにいるのか、目処がついてはいない。ただ、火が燃え広がる方に向かってみた。
火矢の本数がふえて来たので背筋に冷たい汗が流れた気がした。
進んだ先で目にしたものを見て、思わず座り込んだ。
「これは戦場…うっ…」
そこには人であったものがたくさん転がっていた。
矢が刺さった者、鎧を赤く染めた者、焦げた臭い、黒い塊…
思わず、腹部から何かがせり出す。
それを出しきるまで、私は動けなかった。
暫くしてから、口を拭い立ち上がる。
「あの子を…探さなきゃ」
炎と黒い煙を抜けて、ただ進む。
足元は見ない。なるべく上を見て、煙が流れていく方向へ、とにかく進む。
何度も足がもつれ、それでも進むと煙が薄くなってきた。黒煙から白煙へ。
白煙の中、何か大きな物があった。機械のような…
その側、リトと同じくらいの身長になった女の子がいた。
今まで見てきた中で、一番顔色がいい。紅潮した頬は白い肌を目立たせるが、同時に表情も輝いているようだ。
金色の髪も艶が見てとれる。
隣にいる同じく金髪の将校と何か地図を見て話をしている。話を聞き、地図を見て声を掛けている。将校もあの子に詳しく説明をしていた。
顔を見て、話をしている様子から、慕っているのが良く見てわかる。
「見つけた。…よかった、クルトさんのご先祖様と一緒だったのね」




