お仕立て フォックステール その10
藍色の空が白くなり始めた。
広場には人が集まり始めた。ただ、顔が見えない。フードを深くかぶり、或いはスカーフを巻き顔が皆見えなかった。
私を居ないものとして、人々は広場を多い尽くす。
私は、女の子のいる台のすぐ下で、人々に囲まれた格好になった。
女の子のいる台には人が上がった。
顔が見えないように、仮面がついている。
女の子は…涙の後が見えた。ただ、もう涙は流れていない。
「罪状を言い渡す!この者は雇い主である主人を魔法の力により首を絞め殺した、魔女である。そのため、この魔女を絞首刑に処す!」
仮面の男が声を張り上げ書状を読み上げると、取り囲む群衆の歓声が上がる。
私の中に、どろりとした感情が渦巻く。いやだ、こんな感じ。
「私はどうしたら…」
この状態を変えたいけど、何をしたらよいか。考えあぐねている間に、女の子の首に綱が巻かれようとしていた。
先程の男が女の子の首を前に押しやると、新たに台に登った2人が綱を手に、女の子の首に一巻きしていた。
「待って!その子を助けて!」
私は思わず台によじ登り、女の子の首に手を指し伸ばした。
たちまち縄は黒く焦げだし、火を上げた。あっという間に消しかすになり、辺りのざわめきが大きくなる。
私は女の子に覆い被さるように、抱きつく。
「その娘の身柄、私が預かろう」
聴衆の声が水を打ったように静まり返った。女の子が顔を上げた。
私も同じように顔をあげる。
そこには、金色の髪にあのきれいな顔立ちが見えた。
「!クルト…さん?…ううん、鎧とか、服が違う…肩で止められたマントルなんて、古い文献でしか見たことない」
騎士団の格好とは違う。それに古めかしすぎる衣服の様子だ。
「クルトに良く似てるだろう?」
「ユーディト様、どこにいるんですか?」
聞きなれた声にどろりとした感情が少し落ちていった。辺りを伺うが、あの凛とした長身の姿を見ることはできない。
「どうも声しか飛ばせないのだ。済まない。
彼は後の初代のフォクツ公爵で、クルトの先祖だ」




