お仕立て フォックステール その9
追いかけた先には、大きい木とその木のうろが見えた。女の子はうろに入っていくところだった。
うろに見えるのは小さいぬいぐるみと、一枚の布。それを手繰り寄せて、体を縮ませてうろのなかで眠りに着こうとしている。
「どうして一人でいるんだろう…家もないのかな…」
思わず私は手を差し出し、女の子の頭を撫でた。少し頭を動かし、女の子は私の手に頭を擦り寄せる。
掌に頭の重みがかかる。
「あらら、寄りかかって寝ちゃった。かわいい…」
すーすー、と寝息が立てられた。中腰の体勢でいたので、辛くなって女の子から手を離すと、
「また…変わっていく…」
上に吊るされた布が落ちるように、景色が変わり始めた。
次は藍色の空が広がる、石畳の上。街中だろうか?
「今度はどこだろう?…さっきからあの女の子しか出てないから、あの女の子が何かあるのよね?」
辺りに人一人いない。
私は石畳を踏み締め、歩きだした。
ただ石畳が連なる道だけで、人や店は見えない。石畳で舗装されてるなら人がいる場所なのだろうか?
訝しげに道を歩み進めると、広場に出た。
そこにあの女の子がいた。少し高いところで椅子に座っているようだ。
遠目から見たときです座る椅子と足の位置から、少しほっとした。
「あ、さっきよりも大きくなってる。リトよりちょっと小さいくらいね」
ひとりぼっちだったけど、そうではなくなったのかしら?そう楽天的な考えは、間違いであったことに気づく。
椅子に座る女の子の肩から下げられた、木の板、そこには…
「な!」
『罪人につき明朝処刑』
「どうして…寂しい思いをしていたこの子が…?街中に出てきてどうして…?」
意味がわからなかった。ひとりぼっちでいた、この女の子が何をしたのか、よりによってどうし罪人になったのか。
私は女の子の近くに駆け寄った。
女の子の服や足には赤茶けた汚れが見える。
女の子がいる少し高い台に登り、椅子に手をかける。女の子を縛る鎖は幾重にも掛けられていて、私の手で何かできるものではなかった。
「…私…この子を見ているだけしかできないの?」




