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お仕立て フォックステール その7

「さて、私はリゼの言う通りエルフの端くれだ。人間として暮らすことを決めたから一般にはぐれエルフとも呼ばれてる」


 ソファーから立ち上がり、続き部屋にユーディト様はテーブルの上にあったランプを手に向かう。たちまちいた部屋が暗くなるので、私も急いで明かりを追いかけた。


「エルフっておとぎ話みたい」


「おとぎ話の生き物だよ。私はエルフの里を捨て、人として生きることにしたから、もう仲間には会えない。

 私にとってもエルフはもう幻だ」


 ベッドの脇のサイドテーブルにライトがおかれる。ギシッと、音がしてユーディト様はベッドに、腰かけた。

  声は変わらず淡々としていて、悲しみも見えない。


「どうして捨てちゃったの?」


「守りたいものができたから、な。命を懸けて守りたくなった。だから今までの世界を捨てたんだ」


 命を懸けたいものはなんだろう。

 ただ続いた言葉はその答えではなかった。


「リゼは今の連続した生活の世界で生きている。…それは時に苦しいが、他所から茶々を入れられてもそれを続けようとするのは凄い」


「…それは違う気がする。茶々を入れられて、って魔女が私に、えーっと、魔力の扉をこじ開けたことよね。

 私は今の私の生活を守ることを考えてるだけで、それは魔女になってヒトを傷つけたくないってだけで、他の考えはないわ」


 私は暗い中に取り残されそうで、明かりに近づいた。ユーディト様が私のスカートのポケットに手を入れた。中から紐状の、さっき計測に使ったメジャーが、出てくる。


「メジャー?」


 ユーディト様は立ち上がると、メジャーを伸ばす。伸ばしたメジャーを私の手首に巻き付ける。

 手首にはリボン結びが出来ていた。


「そろそろ、リゼの魔力の扉を閉めよう。

 魔女に近づいた時にメジャーはほどけて魔力の扉は閉じて戻れる。行っておいで、魔女の見ている世界に」


 クルッと、ユーディト様と私はまるでダンスでも踊るかのように、いた場所が変わる。ユーディト様の後ろにサイドテーブルの明かりがあった。

 軽く肩を押され、ベットがあると思った場所を…私は深く落ちていった。

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