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お仕立て フォックステール その6

注)フォックステールは、おしり部分を特に強調するパニエのような下着のことです

 ユーディトの言葉を聞き、恐る恐る真珠に歯を立てると、柔らかい果肉が口の中に転がり込み、今まで食べたことのない味覚が口内に広がる。


「甘い…ちょっと酸っぱいかな?美味しいじゃないですか」


「見た目の毛むくじゃらも好きではないんだが、一番の曲者は種なのだよ。上手く取れない」


 食べ進めると種に当たった。…確かに身離れよくないかも…

 とか思っている間に、果汁が手首を伝い始め焦る。


「た、確かに…手も汚れるし…」


「フィンガーボールも用意されてるから使ったらいい」


 ユーディト様が銀色の水が入ったボールを寄越してくれた。そのままフルーツサンドにかぶり付いている。

 ありがたくフィンガーボールを使わせてもらうと次に何を食べようか、思案にくれてしまった。

 みんな美味しそうだよ。



「美味しかったー。ごちそうさまでした」


 サンドイッチに果物、紅茶にスコーンも食べ終え、私はもうお腹いっぱいです!

 思わずリラックスしてソファーの背もたれに背を預け、少し姿勢を崩してしまった。

 隣からのユーディト様の視線に気づき、あわてて背を話して姿勢を良くする。


「な、なんですか?」


「いや、少し打ち解けてもらえた様で良かった。

 普通の人間から見たら、私は奇怪な存在だからな。…リゼも距離を取っていただろう?」


「そりゃ、魔女になりたいかなんて、嫌なこと聞かれたらそう思います」


 先日の、カイさんの家の庭でのことを思い出し、眉を顰めた。

 ユーディト様は首をかしげる。


「…家の庭に突然現れたことは何も思わないのか?」


「?魔法ですよね?カイさんとか、リトが使う。

 女性の魔法使いは少ないって聞きますけど、一番のユーディト様は騎士団にいらしたくらいですから、魔法つかえるんですね」


「…なるほど、あまり魔法を知らないのか。それにしては私の容姿も気にしなさすぎる…」


 今度はユーディト様が背中をソファーに沈め、脇にあったクッションを手に取り、抱えた。


「ちょっとは私も、ユーディト様がエルフみたいだな、とか耳見て思いましたよ?でも、エルフだとしてもしてなくても、ユーディト様は私にとっては、失礼なところがあるけどかっこいい、公爵夫人です」


 私の言葉を聞き、ユーディト様は口許にクッションをおき声をくふふふ、と声を漏らし、目を細めた。


「リゼは妙なところで強さがあるんだな。人は人、自分は自分、と割りきってるような」


 ユーディト様に言われて、少し思いめぐらせる。

 視界に、テーブルの上に置いたランプが目に入り、その中に灯された炎を見て口を開く。


「…私の家、父と母が早くに流行り病亡くなって。お姉ちゃんが私たちを養ってくれたんです。

 ヒトと比較しちゃうと、私は学校も十分いけなかったし恵まれてないかも知れないけど、職を手に入れて、精一杯生きてきたつもり。

 姉弟もいて、私は一人じゃなかったから、私は私なりの道を歩めているって思…いこんでここまで来ました!」


 ぽつぽつ話し始めたけど、途中で気持ちが高ぶってしまって、私はわざと話を途中から語尾を強めに話を切った。


「今の幸せを見つけられることは、特異な才能だよ。きちんと今を見つめられている。

 それがリゼの強さなのだな」


 ユーディト様はクッションを口許から離すと、私の言葉を肯定するように、ゆっくり話してくれた。

 その言葉は、私の中に入り、私自身をも肯定してくれてるようで、こそばゆいような気持ちを抱いた。

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