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お仕立て 舞踏会ドレス 4

「いってらっしゃい、ニア」

 ささっと部屋から出ていってしまったニアの背中を見送ると、廊下と接していない、別の扉がキイッと開いた。


「待たせたな」

 部屋の空気が張りつめるような声が響いた。そこまで大きな声ではなかったと思うんだけど、とてもよく通る声だった。

「いえいえ、当商会にご注文頂き、また本日はお時間いただきありがとうございます。

 ティターニア様のお洋服のお手伝いができるんですもの。この身に余る光栄です」

 ヴォルフラムが右手を横から胸の前に移動させ少し大袈裟な礼をした。

 私も慌てて体を正し、手は太ももで軽く握り頭を下げる。

 ヴォルフラムが体制を戻した動きを感じて頭を戻すと、長身の女性がいた。

 髪の長さはボブだが、左側が長くアシメントリーになっている。右の短い髪からは少しとがったような耳が見えた。

 シャツにパンツ、長めのブーツ、肩からはショートマントが翻る出で立ちで、公爵婦人には思えなかった。

 どちらかというと、この方王子様っぽい…

「こないだのお針子ではないんだな」

「そうなんです。カイの義理の妹です」

「はじめてだな。ティターニア、妖精の女王などと言われてる奴を目の前にして、奇妙な気分だろう?」

 夫人の目が細くなり、私に近づくと視線を合わせてくれた。声が凛としてはいるが、なんだか弾んでいる。

「ティターニア?」

「そうそう妖精が住まう公爵家の女主人、それでティターニアって社交界で呼ばれているのよ」

 ヴォルフラムが説明をしてくれるが、夫人は肩を竦めた。

「私はティターニアという柄ではないんだが…元々軍人上がりだ、そんな優雅なものではない。

 先程も屋敷の裏にある広場で馬を駆っていたところだ。汗も流さずに済まない」

 軍人と聞いて思わず納得した。だからこんなに薔薇の花のような華やかさがありながら、中性的なのか。

「じゃあそろそろ仕立てに入りましょう。リゼそっちの反物とって」

 思わず花に見入っていた私はヴォルフラムの声で引き戻されると、慌てて並べておいた反物を取りに向かったのだった。

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