表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/99

お仕立て 舞踏会ドレス 2

 バルテン商会に着いたらニアとヴォルフラムが既に準備を整えていて、二人の足元には箱に入った反物が見えた。

「ニアも一緒に行けるのね。ニアもお針子仕事するの?」

 話しかけるとニアは首を振り箱を持つ。

「この子は荷物持ち。力あるからね」

 確かに~。ざっと見ただけで反物が十本以上箱に立てて入れられてるんですが…これ持てちゃうなんて、ニア、すごい。

「そうなんです。わたしだと逆に針折っちゃっうので、反物とか、道具を持っていくお手伝いをしてます!」

「え…針って…折れるの?」

 堅い生地に細い針を刺して折っちゃうことはあるものの、ヴォルフラムのジェスチャーは右手と左手をまっすぐから木でも折るみたいに、ボキッというジェスチャーをしている。

「そうこの子折っちゃうのよ。結構何本も折ってるのよ?

 でも力は強いからね。荷物持ちをよくお願いしてるの」

確かに歩きだしたニアはふらつきもしない。箱から飛び出す反物の方がニアの身長を越えていた。


 急勾配な坂道に差し掛かるとニアの歩みは遅くなってしまった。これだけの重量、そうだよね…

「バルテン婦人は人扱いが酷いのです。

 でもあそこから離れられないですし、ご飯は美味しいですし」

 ぶつぶつ呟くニアの近くにすすすっとヴォルフラムは、寄っていきこっそり合いの手を入れる。

「それにクルトにも会えるかもしれないし?」

 ガバッと俯いていたニアは顔を勢いよくあげた。ヴォルフラムを睨む。

「!!!…クルト様ではないのですが…まあ……」

「妻子持ちなのに好きよね~」

「…」

 ため息を着くとニアはこの話題にはもう口を開かなかった。また少し俯きがちに箱をもって足を進めている。


 急勾配の坂が終わる頃、立ち並ぶ家の雰囲気がガラッと変わってきた。ひとつの区画が先程よりもずっと広く取られた家ばかり視界に入る。

 中にはきっと庭師さんが作り込んだと思わしき、ウサギ型にカットされた木があったりして、庭にかける手間も桁違いになってきた。


 ヴォルフラムがすこし先にある建物を指差す。

「さあさあ、フォクツ公爵家につくわよ。

 あ、リゼに話をし忘れていたわ。クルトの祖先、初代のフォクツ公爵はね、人ならざるものに気に入られて加護受けてたって話があってね。

 今のフォクツ公爵家には、まだまだ妖精やら小人やら隠れてるから、色々隠してきたりイタズラされやすいけど怒っちゃダメよ」

 なにそのメルヘンちっくなの。妖精とか見たことないよ!

 坂道をずっと上ってきて足がパンパンだったけど、心なしか軽くなった気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ