お仕立て バックの補修 7
(なんでこうなったのよ!)
心の中で悪態つくものの、どうにかできるわけではなく。私は外出用の馬車にいる。
目の前には見目麗しいクルトさんが座っている。金色の薄い色した髪を後ろに一つに結び、窓の外を眺めている。
紺色の制服にはカイさんよりも多くの勲章が見え、見ただけで偉い方だ…と思えてしまい、こちらも緊張した面持ちになる。
しかも特に話も弾むわけもなく…というか、私みたいな町娘、接したことあるんでしょうかね?
話しは巻き戻ること一昨日。夕食時に私はお姉ちゃんとカイさんに外出したいと打ち明けた。
食卓の席でお姉ちゃん、カイさん、リトが並ぶ。
「リゼ、今日も倒れたのだからあまり無理はしてほしくないんだけど…」
私の話を聞いて、お姉ちゃんは思った通り止めてきた。
「うん、お姉ちゃんもちろん心配はわかってる。
でも少し外に出たくなった気持ちを不安だからで二の足踏んじゃうと、このまま外にでられなくなるんじゃないかって思えるの。
もちろん倒れたりしたら怖いのは私も一緒だから、お姉ちゃんやカイさんに同行をお願いしたいの。
よろしくお願いします」
でも私もここで折れる気はないので、どちらかと言うとカイさんの方を見て訴えかけ、頭を下げる。
「リム、心配な気持ちは分かるけど、俺はリゼが外に出たくなった気持ちは尊重したいよ。
ツィトブルグに着いて、行方不明になるなんて言うショッキングな事があったけど、気持ちの踏ん切りが何かついたってことじゃないか。
リゼ、護衛をする手配を整える時間だけもらえるかい。なるべく早くするよ」
「リゼさん、行き先は洋裁の道具が売っている店でしたよね」
突然話し掛けられて私の頭は今に引き戻された。気づけばクルトさんの視線は外から私に移動していた。
「あ、はい。村から持ってきた道具一式がなくなってしまったので、仕事が出来ないのです。
あと、革製品の依頼を受けているのですが、それ専用の針も購入したいと考えています」
話してから、はた、と気づいた。…お金も一緒にバックのなかで、私無一文だわ…




