お仕立て バックの補修 5
お水を飲み、ぼーっとベットの上で座っていた。
お姉ちゃんがいて、カイさんがいて、カイさんよりも偉いクルトさんもいる。お姉ちゃんが言う通り、私はここにいれば魔女からは安全だろう。
でも心がざわつくのは、もし…もし私が魔女だったら、ここは怖い所なんじゃないだろうか、そんな考えがよぎるから。
コンコン、と小さく扉がノックされた。
「どうぞ」
少しだけ扉が開き、ファティマが滑り込むように入ってきた。
「すみません、具合悪いところ…私と話していて倒れたので、もしかしたら私の発言が何か、気にさわったんじゃないかと気になりまして」
こそこそ小さい声で話しているので、きっと隠れて私のところに来たのだろう。
「ごめんね、ファティマ。気を使わせちゃって。もう大丈夫!」
そう答えて、胸の前で握りこぶしを両手とも作ったが、その手を広げてファティマにおいでと手招きする。
ファティマが近づいてきてくれた。
私の喉がゴクリとなる。でもファティマは魔女の眷属なるものと戦っているのだ…もしかしたら魔女にもあったかも。
「ね、ねえ。魔女ってどんなのだったの?」
私と似ていませんように。
「大丈夫ですか?この話題?」
ファティマは眉を潜めるが、口を開いてくれた。
「私が戦ったのは眷属でしたので…蝙蝠が人間に化けていたようです。私の故郷にもいる大きい蝙蝠でした。
魔女は姿を表さず、蝙蝠だけを地中から出てきたものの中に入っていって逃していますので…」
地中から出てきたもの。私の意識を失う最後の記憶と合致する。地中から出て来たものの中にいた…私は魔女なんだろうか?
手が思わず固く握られていた。
何とか平静を装い口を開く。
「魔女って、どんな感じなのかしらね」
「私も対峙はしていないので…ただ、眷属は非常に人に悪意を感じる存在でした。きっと魔女も同じではないかとおもいます」
悪意の塊…
ファティマの話を聞きながら、私は違うと思う気持ちと、私が知らないうちに何かをしていたらどうしようかと言う気持ちが押し寄せる。
「リゼ、顔色が…」
ファティマの顔が目の前に出てきた。怖いのに口から言葉が次ぐ。
「わ、私、魔女じゃないよね?」
「違います。リゼからは悪意を感じません」
ファティマがはっきり言う。言葉が次がれると、思ったことがぽろぽろ涙と一緒に出てくる。
「あ、あのね。地中から出てきたのの中、私、いたかもしれない」
「リゼは巻き込まれただけです」
「私の、中に、…みんな嫌になっちゃう気持ちがあって、出てるんじゃないかって…」
「違います。リゼは暖かい人です。魔女の眷属が持つ悪意はありません」
「で、でも怖いの!私、…たぶんそこにいた…」
「リゼは巻き込まれただけです、私を追いかけてきて、巻き込まれたんです」
涙と共に吐き出す問いを、ファティマはすべて否定していってくれたのだった。




