お仕立て バックの補修 1
「ファティマ、もう行っちゃうの?」
「すぐではないですが、その予定です。この街で準備を整えたらまた旅に出ます」
風も少なくて、暖かい昼下がり。そのまましてるとお昼寝しちゃいそうだから、お姉ちゃんの針道具を借りてサラの依頼の品を作っていた。
先日の私が行方不明になって、牢屋に入れられて、出された一件以降私のバックはまだ行方不明。サラとの念書とか、騎士団への紹介状ひっくるめて、私の裁縫道具も行方不明です。紹介状とか悪用されないかちょっと怖い。
近くで座って本を読んでたリトが、ファティマの話を聞いて驚きの声を上げた。
私のかわいい弟は、私がいなくなってから心配しすぎで私のそばを離れないのですよ。かわいいから良いけど。
「そうだよね、ファティマって別なところに行くために私たちに付き添ってくれたんだもんね…」
ファティマが一緒にいてくれて心強かったのにいなくなっちゃうのは寂しいけど…
「あ、ねえ。もしよかったら何かお礼の品を贈らせて。旅支度の間に作るわ」
「ありがとうございます。私もできたらお願いしたいと思ってたんです。実は私のバック、破れてしまいまして…頼めませんか?」
ファティマが体につけていたバックは確かにぱっくり切れた穴が開いている。革製小さい穴だから大丈夫だけど、ほおって置いたらどんどん広がっちゃいそう。
「スリをした人を追いかけていたときに…たぶん引っ掻けてしまったんだと思います」
「革製のバックを破けさせちゃうくらい鋭利な所に引っ掛かっちゃったのね…ファティマは怪我ないの?」
ファティマはにっこり笑いながらバックをおろした。
「私は大丈夫です。それでは、このバックよろしくお願いしますね」




