お仕立て パフスリーブのドレス その9
「な、に、これ…!?」
体の強ばりからくる痛みもあったが、少し腕をあげるとジャラっと音のなる鎖にリゼの頭は明瞭になった。
逆にはっきりしすぎて、頭の中まで冷えていくような気分だった。幸せな夢を見ていた気分があったはずなのにどこに霧散したのか。
そして、どうして自分は囚われているのか…まるで罪人のように。
強ばる体をなんとか上体を起こし回りを見やる。どうやら石で円く組まれた場所らしい。扉があり、反対側には鎖が固定されている。
視線を上にやると眩しい。高い天井には窓があり、そこから光が入っているようだった。
(真上…だよね?お昼くらいってこと?)
再度辺りを見渡すと扉のすぐそばに食事がおいてある。パンとおかずが置かれているところを見ると、食事はくれるみたいだ。
飲み物のコップも置かれている。
あとは…ぐるりと見渡すと別の端の方に壺のような容器…たぶんあれ、おまるがわりよね…
(牢屋か、監禁されてるかってことかな)
大分はっきりしてきた頭のなかでそう思うと、お腹がぐーっとなってしまった。鎖を少し持つと十分な長さがあるように見える。
私は立ち上がるとじゃらじゃらさせながら食事に近づく。ここは食べ物に罪はないしありがたくいただきましょう。と、言うよりお腹すいた!
「それにここから出ないと。…リト、心配してるだろうな」
リトの顔を思い出したらなんだか悲しくなってきた。リト、ファティマとは合流できたかな?お姉ちゃんにも会えたかな?
考えていたら再びぐぅっとお腹がなったので、目の前の食事に注目してしまう。料理はパンとクリーム、ザワークラウトかな?パンとか見事真っ黒。お行儀悪いけど指でさわるとカリカリじゃないから、別に焼きすぎて真っ黒な訳じゃないみたい。
「いただきます!」
酸味が強くてあまり好みじゃない食事を終えたあと、出たいと思いながらも何をすればよいかわからず、なにもすることなく、私はぼーっと待っていた。
痛いのやだし、そんなに暴れて騒ぐ気にもなれなかったと言うだけで、時折うつらうつらすることもありながら、ただ座って待っていたのだった。
私のことをこんな所に入れた人は誰かは分からない。特にその人物がくることもなく、部屋に入る光は徐々に壁の上の方に上がって行く。やがて時間が進むにつれて光は部屋の壁にも入らなくなったころ。
ガチャッ
扉が開く音がした。そこから見えたのは見慣れた、カイさんが良く着ている制服姿だった。




