お仕立て パフスリーブのドレス その7
なんだか回りは白く薄く靄がかかり、不思議な匂いがしていた。
夢を見ていた。
お母さんがいる夢。私と一緒に服を作ってくれるの。大きいお人形さんに合う、赤いドレス。
「ねえ、どうしてお母さんとお父さんは私やお姉ちゃん、リトの前から消えてしまったの?」
尋ねてもお母さんは悲しそうに首を横に振るだけだった。
悲しい顔を見たい訳じゃないから、私は色々お話しした。村での事、旅したこと、お姉ちゃんのこと、リトのこと。そうしたらお母さんはにこにこしながらお話を聞いてくれた。
人形に合わせて服を作っていく。この少し大きいお人形には、金色のふわふわな髪が可愛いから、ふんわりしたワンピースを作りたかった。
袖、前身頃、後身頃、一対になるように生地を切り取り、作っていく。袖をふんわりさせるから先に作り、それから身頃を合わせていく。
最後にスカートになる部分をギャザーを寄せて作り縫い上げる。
お母さんが刺繍を見せて、と言ってきた。
「刺繍はいっぱい練習したのよ?お姉ちゃんからお母さんも刺繍上手だったって聞いて。いっぱい縫うから見てくれる?」
そういうとお母さんは頷いて脇で見ていてくれた。
リゼの頭にはヘルメット状のものが被せられていた。その格好のまま、笑いながら、話をする。
近くにいるイズミに寄りかかり、親しい人のようにしている。
「イズミ。今回は唐草模様を作って貰おう。繁殖力の強い蔦だ。糸はこれを使え。
妾の力を込めた糸巻器から作ったものだ」
少し離れたところから、糸を低くイズミに投げる。イズミはそれをリゼに手渡しし、何事か話す。
イズミは手を動かせず、落としながらも拾い上げ、リゼに渡した。イズミの額には脂汗が浮かび、あまり具合が良くないのが見てとれた。
しかしリゼは気付かず、楽しそうに糸を使って刺繍を始める。
魔女は煙管から紫煙を燻らせる。辺りは妙な匂いに満ちた。そして、白煙が少し濃くなったのだった。




