お仕立て パフスリーブのドレス その6
落下していく黒衣の人物は再び、別の生き物に変化をした。
先程とは異なり、バランスを崩した飛び方をするその生き物見て、やっとファティマはそれが故郷でも良く目にした蝙蝠であることに気づいた。
故郷では果物を食す穏やかな性格の蝙蝠だった。
先程の蝙蝠の様子からは敵意しか見えなかったが。
今、大型の蝙蝠は上空に飛びたちはせず、羽を大判の黒い布のように風にのり緩やかに滑空していく。
やがて地面に着いた。再び人型になったが、分が悪いと悟ったのか、ファティマの姿を見上げても再び氷の刃は降らせなかった。
遠くてファティマはどんな表情をしているのか見たく、少し身を乗り出して屋上の手すりから下を覗きこんだ。
風が舞い、洗濯物と思わしき布の合間から、黒衣の人物の側の土が盛り上がったのが見えた。かと思うと、人がすっぽり入るであろう機械が出てきた。まだ地中にも機械は埋まっているようだ。その機械に黒衣が翻り入っていった。再び機械は土の中へと潜っていく。
そして、先程までの寒さは消えさり土を抉る音も消えて、辺りもまた静寂に包まれたのだった。
リトは道を聞きつつなんとか騎士団の詰所までたどり着くと、辺りは黒い帳が降りていた。そうはいっても街中はまだまだ活気があり、明るかった。
顔馴染みの若い団員に会うことができて事情を話すと、空腹を訴える頃にはカイとリムには面会できた。暖かい食事に久々の二人とありついた。
旅の連れである、と事細かに容姿を伝えていたことと、ファティマにも騎士団に行くつもりだという話を通していたこともあって、リトが眠くなるくらいの時間までにファティマにも会えた。
しかし、翌朝リトが目を覚ましてもリゼは姿を顕さなかった。
そしてファティマの申告もあり、日が高い位置になるまでにはリゼの捜索隊が組織されたのだった。




