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お仕立て ウエディングドレス その4

 厳かに結婚式が始まった。

 鐘のあとに音楽がなり、教会の扉が開いた。


 えーっと、私は音楽に造詣深くないので、何がなってるんだか分かってないんだけど、なんだかボエーボエェェーって鳴ってます。

 なんだろう?笛かなあ。

 そんな中、ゆっくりと歩いてくるお姉ちゃんとカイさん。後ろの方の席から、ほうっ、って嘆息する息づかいが聞こえてくる。

(お姉ちゃん綺麗だからなあ…)

 私のところまではまだ来ない。でも空気が変わったのは分かる。

(おとうさん、おかあさん、お姉ちゃんがついに結婚式ですよ。…見ててくれてるのかなあ)


 お姉ちゃんとさっきまで話していたときには、いつも通りできていたけど、…うん、何だか鼻の辺りがツーンとしてくる。目が潤む。

 嬉しいはずなんだけど、寂しい。

 離れる訳じゃないのに、…うーん、上手く言えないけど、感極まるってやつ?

 なんとも言えない気分で、お姉ちゃんを見るのがちょっと感情が溢れてしまいそうで、思わず神父様の後ろのステンドグラスに視線を移した。

 神の子を抱き締める、聖母様のお姿…なんて考えて、わざと気分を紛れさせた。お姉ちゃんの姿を見たいし、妹として送りたいけど、心がついていかない。

 なんとも言えない重い気持ちが私の中に占められた。

 その間にお姉ちゃんは私の座る席の近くを歩いて、通りすぎる。

 その時、不意に暗くなってきた…ステンドグラスに黒い影が移ってる…あれ?だんだん大きく…


ミシミシミシミシ!


 ステンドグラスの部分を何かが光を遮って、大きな音が鳴り響いた。

 ボエェェー音なんかよりもずっと大きい…

「り、リゼ姉…な、なんだろう…」

 突然の暗さに、教会内も音楽が止み参列者もざわざわと話を始める。


 ピシッピキッ!


 不穏な音が響いたと思って…あ!と思い思わずリトに覆い被さる。

目のはしにステンドグラスにヒビが入るのが見えた。そして…


 バァァァン!!


 ガラスが割れた音がした。

「キャァァァ!」

「ガラスが割れたぞ!」

「木だ!教会裏の木が倒れたんだ!」

 怒号が響く。悲鳴も響き渡った。

「リゼ姉!リム姉が!」

 下でリトが私を掴んだ。言いたいことわかってる。

 お姉ちゃんがいたのは真ん中。ステンドグラスの真下近くだ。

 …怖くて、体を動かせない。リトが私を見つめる。

 自分の息が上がっているのが分かる。心臓の音が耳からする。

 怖い。顔をあげられない。


 どれぐらいそうしていただろう。

 ざわざわと騒がしく回りがなってきた。

 もしかしたら、式場近くで待機していた騎士団の方々が救助に来てくれたんだろうか?

「新郎も新婦も無事だぞ!無傷だ!」

「な、なんだ?氷?」

 しばらく顔を見合わせていたリトと私は、ようやく息を長くはいた。 私はペタンと座り込み、代わりにリトが立ち上がる。


 足元にはガラスは全くなかった。

 ガラスはお姉ちゃんとカイさんを守るように、レース状になったドームの上にあったのだった。

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