お仕立て パフスリーブのドレス その3
ファティマと泥棒を追いかけたものの、人混みの多さとファティマの足の早さ追い付けず、やがて私は足を止めてしまった。
膝はがくがく言い、呼吸は荒く乱れた。
大きく息を吸い込み、なんとか呼吸を整えようとしたが、なかなか落ち着か人混みから離れるように、ファティマが入っていった路地に入って壁に背中を付いた。
人が行き交う雑踏から一本入った路地は薄暗く大通りとは異なる雰囲気だ。人は全くおらず、たったの1メートル離れただけでも大通りとは騒がしさがないからか、別の場所のようだった。
ファティマともはぐれてしまったし、リトの事も置いてきたことを思い出し、路地から元の場所に戻ろうかと思ったのだが
「…な、なに?」
地面が競り上がってきた。土で固められた道が盛り上がる。バランスを崩し、尻餅を付いた私の足の辺りに盛上がった土からごつごつした金属が見えた。
何かが地面の中から出てこようとしている?
思った瞬間、金属の部分が開いた。開いた先は空洞。体を無重力感が襲う。
そして嗅いだことのある匂い。これは、こないだイズミさんが用意した馬車の…
声を上げる間もなく、私は大きく口を開いた機械に飲み込まれた。
一人残されたリトは光る髪止めを拾い上げ、辺りを見渡した。
リゼの銀の髪止めは細かい細工が西日を浴びて赤く光っていたが、待っているうちにやがて空の暗い青も映し始めてきた。
「これ、どうしたらいいんだろ…完全に俺はぐれてるよね」
しばらく辺りをうかがうが、二人が戻ってくる様子もなく、リトは回りの人に道を聞きながら騎士団の詰め所に向かい始めたのだった。




