小話 リト
またまた途中になりますので加筆をあとでします。
書き上げきれなくてすみません。
バシャバシャ水で顔を洗い、リトはタオルで顔を拭いた。
町の広場に備えられた井戸は誰でも使えるようになっている。木陰にある井戸のハンドルをもう一度押し下げ、水を出す。
水を口に含み、口をゆすいで吐き出した。
朝早く村を出て、足場の悪い道を町まで来たので、さすがに酔いそうだったが、なんとか具合が悪くなる前に馬車は町についてくれて助かったと思い、深く息をつく。
髪についた滴がポタリと落ちたので、頭にもタオルをかけた。
リゼはサラと一緒に町につくなり、出掛けてしまった。なんでも客がいるらしく、仕立てたものを渡しにいった。
リトは何をするかというと…
「リトくん、少しスッキリしたかい?大丈夫そうなら、そろそろ行こうか」
馬車の御者をしてきたジェフがやって来た。
サラとジェフは町までは送ってくれたがこの先はリゼとの二人旅になる。
旅にも慣れておらず、まだ幼いリトと若い女性のリゼの二人旅は危ない、とサラが強固に反対をして、用心棒となる人を探しにいくのだ。
なんでもこの町には旅人が通るので、旅に慣れた人が多いらしい。
「わかりました、今いきます」
頭に被ったタオルを外すと、軽く畳み背負ったバックにしまった。
「魔女が出たって話が出て、町に来る旅人は増えているみたいだよ。あとはどれだけ逆方向にある王都まで付き合ってくれる、お金を求めた人がいるかだなぁ」
ジェフは軽い様子で話ながら道を進む。思い荷物を持ち、歩くのが遅くなりがちなリトを待ち、時には手招きをしながら進む。
石が敷き詰められた道は進むにつれ、整然と並べられた石は少なくなり、徐々に不均等になっていった。
不均等な石のあいだから草が生えている。
あまりお金の掛けられていない整備具合の道をしばらく進むと村から来たときの門とは異なる門から続く塀が右手に見えてきた。
「あそこがが王都に続く街道に繋がる門なんですね」
門は村側の門とは異なり、石製の建物のようで堅牢だ。遠目からみても明らかに戦いを想定して造られた建物だとわかる。
「そうそう。隣国が攻めて来たときには、民を逃がしあの門を閉じて応戦するらしい。
もっとも、最近は隣国からは魔女がたまに現れるだけで、戦いに至るような攻めて来る様子はないけどな」
ジェフがリトの問いに答える。
ジェフは今は退官をしたが、門番の兵士を勤めていたらしい。そのため多少は武芸にも通じ、この町のことにも詳しい。
「さあ、もうすぐつくぞ。朝早い時間だから、きっと変な輩達はまだ飲んでるか、寝ているか…
朝から起きてる連中なら仕事熱心なはずさ」
ジェフが指し示した先には宿があった。規模は大きいがお世辞にも建物は古く、綺麗ではない。
辺りにいる連中も、酔いつぶれて寝ているものや、ジェフをみて声をかけようとしなを作りながら寄ってくる、目の窪んだ濃い化粧をした女など、あまりよい環境には思えなかった。
思わずリトは追いかけていたジェフに追い付き、すぐ脇を歩く。
「悪いな、子供がいるからお前には金を払えん」
ジェフの腕に女が手をかけたが、断りの言葉を伝えると、なにやら文句を言い、リトを睨みながら離れていく。
「僕をダシに使わないで下さい」
「悪い悪い、まあ、時間かけずに断りたかったからな」
ジェフは宿の扉に手をかけ、中に入る。
入ってすぐは食堂だった。幾人か食堂の壁を熱心な見ながら食事をしている。
確かに外にいる連中とは異なり、いくらか身を整えた旅人が多い。
辺りを見回していると一人、明らかに異なる人がいた。
そもそも男の旅人の中で一人だけ女であった。
黒髪を高く結い上げている。肌の色は黒く、細いが薄く筋肉のついた腕は肩から露にされている。
傍らには弓が掛けられているのが見える。
(女の人で一人で旅してるのかな…?)
思わずリトは目が釘付けになってしまった。
男の旅人達は食事をとる女の旅人を遠巻きにし、近づかない。
女の人の結い上げた髪が動いた。ゆっくりとした動作で振り返り、リトを見つめ返してきたのだった。




