お仕立て グローブ その5
翌日。
私は朝食を食べ終えると、サラの家へと向かう為に外出した。
早めに出たのは店を開ける前には済ませたかったから。
まだ朝の時間でパン屋さんとか早朝から開く店以外は閉まっていた。道には焼きたてのパンの香り、バターの甘い香りがする。
人通りは疎らだ。
私が住む村は、村といえども結構大きめらしい。村から出たことはないのであまり比較はできないものの、北の方に進むと近くに国境があるから、人の出入りは激しいし、旅人がこの国で最後に立ち寄れる場所でもある。
国境は、魔女が出没してたまに小競り合いとかきな臭い話もあるから、騎士団の出入りもある…だからお姉ちゃんは騎士団の副団長さんであるカイさんと出会ったんだけど。
今のところ、こちらの領地での小競り合いじゃなくて、北の国内だったからのんびりしていたけど、もしかしたら今回の教会攻撃が魔女と呼ばれる人のものなら、きな臭いどころじゃなくて、本当に危ないのかも知れない。
緩やかな坂になってる村のメインストリートを下りながらそう考えた。
でも村は平和そのもので、煙突から煙を出して朝食作りをしていると思わしき家がいっぱいだった。
「まだ…平和なはずだよね」
人気のない道、不意に怖くなって両手で思わず丈の長いワンピースを掴んだ。
人影がなくなったと思いながら歩いていると、ふと、坂の下の方から人影が上ってくるのが見えた。
まだ距離があるが、あの黒い服の感じ…もしかして、イズミさん?
少し急ぎ足で降りると近づくにつれ、あの奇妙な格好なのでイズミさんだと分かる。
「おはようございます、リゼさん。妹の話を昨日忘れてまして、お話に来ました。」
メガネもあって表情読みにくい…でも私がサラの家に行こうとしてたのは元々この用事。
「良かった、仲介してもらった友達に聞こうと思っていたんです。
私も妹さんのものをどのようにご用意したらいいかわからなくって」
「妹、仕事で少し離れた町の医者まで行っています。お時間あれば、馬車でお送りしますが…お店、ありますよね?」
イズミさんはすまなそうに言ってきた。
店はあるけど、依頼を受けたお仕事早く終わらせたいし…頭のなかで天秤にかけてから、言葉が出る。
「妹さんがいらっしゃる町、どこですか?」
「レテミの町です」
きょ、距離ある…うーむ。徒歩だと2日の距離、隣町の先だ。港町でとても大きい。けど遠い…
再び頭の中に天秤が出てくる。
むむむ…今日明日は店が開けられない…しかし紹介だし、上客だし…
「えーっと、徒歩…ですか?」
「いえ、馬車をご用意いたします」
かつーん、と天秤が振りきれた。
馬車なら、2倍の早さで行けるはず!
「わかりました。お店明日の午前までお休みにしてきますので、少々お待ちくださいね。」




