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由姫視点です
先生って不思議だ。
男の人がちょっと苦手な私は、同世代の男の子とも上手く話せないのに、先生とはすらすら話せる気がする。
先生の纏う雰囲気がそうさせるんだろうか。
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彼氏とデートを済ませた奈々、プレゼントとともに来た乃々ちゃん、最後にケーキと一緒に兄が帰ってきた。
先生とふたりきりの、穏やかな空気があっという間に賑やかなものになる。
「由姫と先生、なんか雰囲気が新婚通り越して熟年夫婦みたいだった」
「なっ!??」
「奈々、先生に失礼だよ」
「俺は認めないぞ…」
「認める認めない以前の問題だろ!違うから!」
学校では見れない先生の姿になんだか嬉しくなる。
美味しいねって家族じゃない誰かに言われるのも嬉しくて。
こんなに楽しいのはいつぶりだろう。
「お兄ちゃん!起きて!」
「うーん…。」
「いいよ由姫ちゃん、俺運ぶから。部屋どこ?」
飲む相手がいたからなのか、いつもより飲んだ兄が潰れてしまった。
先生も同じくらい飲んでいたはずなのに、ケロッとしている。
「すみません…」
「いいよ、俺も飲ませすぎちゃったし。空貴も強い方なんだけど家で気ぃ抜けてるからかな」
よっ、と先生が兄を担ぎ、部屋まで連れていく。
やっぱり力があるんだなぁ。
私ひとりではこうは出来ない。
兄があまり飲まないのも、こういうことがあると私が困るからなんだろう。
「先生、こっちの部屋に布団敷いときました」
「あっごめんね」
「お風呂もお好きにどうぞ。私、これで奈々と乃々ちゃんと隣に行きますね。朝、何時に出るとかありますか?」
「午前中には出ようかなぁ」
「じゃあ、適当な時間に朝ごはん作りに戻りますね」
「朝くらいいいよ。食べなくてもいいし」
「駄目です。きちんと食べたほうがいいですよ?」
「…はい、お願いします」
お酒が入ってるからだろうか、いつもよりちょっと可愛い。
「じゃあ、また明日。おやすみ」
「おっおやすみなさいっ」
おやすみ、って!
やだ、勝手に顔が緩んじゃう。
居間で片付けをしていた奈々に、なににやにやしてんの、と言われてしまう。
なんだろう、ふわふわ、する。
そういえば、先生からのプレゼントはなんだろう。
料理当番な私はプレゼントを用意しなくてもいいことになっている。
せっかくだから、私も先生に何かあげたかったな。
先生の誕生日いつかな?
あげたら迷惑かな?
自分の部屋に置いてきた、ちいさな紙袋を思い出す。
なんだかもったいなくて、まだ開けていない。
「由姫?行くよー?」
「うん!」
明日も、先生に会える。
たったそれだけのことが、すごく嬉しかった。