6
パーティなんだからプレゼントも必須よ!との命令が下り、とりあえずショッピングモールに向かう。
誰かにプレゼントを選ぶのもずいぶん久しぶりだ。
なんとなく入った雑貨屋にあった髪留めに目がいく。
あれ、由姫ちゃんに似合いそう、と思った自分にギクリとする。
良くない、と思う。
見て見ぬふりをしなければ。
取り返しがつかなくなる。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「ほんとにクリスマスにやるんだね」
「え?」
「いやだって空貴と乃々とかさ、2人で過ごしたりとかしないのかなって」
「うーん…。いちおう、何度か言ったんですけど…」
「やっぱり由姫ちゃんかな」
「そうなんだと思います。どうせ自分たちのやりたいようにしかやらないから、最近は特に言ってません」
24日のクリスマスイブ、金曜日ということでそのまま泊まれば?というお誘いもあり仕事終わりで佐藤家に赴いた。
普段は週末にお邪魔するくらいで、学校がある平日はここには来ない。
学校で終業式に顔を合わせ、今ここでまた一緒にいることに心がざわつく。
「で、他のみんなはどうしたの?」
「お兄ちゃんはちょっと残業、乃々ちゃんはプレゼント買ってから来る、奈々は彼氏のとこです」
「空貴はともかく高木姉妹ひどくないか」
「まあ、いつもこんな感じです」
ふふ、と笑いながら手際よく料理を作っていく。
必要に迫られて、と言ってはいたけど空貴が自慢するのも分かるくらいには上手いと思う。
それにしてもふたりきり、ってまずくないか…。
適当な理由をつけて一旦家を出ようか、と考えていた時だった。
「先生、今日来てくれてありがとうございます」
「ん?」
「上手く言えないんですけど…お兄ちゃん、あれから友達と連絡とか取ってなくて」
「あぁ…。まあ俺もそうだったけど」
「今までいくら言っても、駄目だったんです。誰かから連絡来ても、頑なに返しもしなくて」
「うん…。空貴には余裕がなかっただろうね」
「でも、もう私も高校生ですよ?友達と連絡取るくらい、いいじゃないですか」
「空貴には空貴なりの考えがあると思うよ?」
「それはわかってるんです。でもお兄ちゃんの時間は私のためだけにあるんじゃないのに…。でも先生と再会してから、なんとなく頑なさがなくなったかなって」
この4年、気にしながらも連絡を取れずにいた俺は何もしてないはずだ。
ただ、偶然再会をしただけだと思う。
「…たまたまじゃない?」
「うーん。そうでしょうか…。ただ、なんていうか今日とかも普通に来てくれたから。普通って大事ですよ」
友人がらみで普通じゃない何かがあったんだろうか。
ふたりの両親が亡くなった頃、ちょうど俺は地元を離れた直後だった。
その時、どんな状況だったかはよく知らない…。
「…だから、嬉しいんです。変わるきっかけになるかなって」
にこっと笑う。
学校では見ない笑顔だ。
ドクン、と大きく心臓が鳴る。
目を逸らしていた感情を嫌でも自覚する。
駄目だ。
彼女は、生徒だ。
好きになってはいけない。