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「クリスマスパーティ?」
「そ!毎年ねー佐藤家高木家合同でやってるのよ。たださぁ、今年うちの親が旅行当てちゃっていないの。人が減ってさみしくなるし遠野くん来ない?どうせ今彼女いないんでしょ?」
「…最後のひとこと余計なんだけど?」
「ほんとのことじゃない」
そうだけど。
そうだけどそんな言い方しなくても。
「先生彼女いないの?さみしいねぇ。おいでよパーティ!」
「別に今は彼女とかいらないの。好きでおひとり様してるの。寂しいとか言うな」
でも用意するの確実にこの2人じゃないよな。
チラリと見ると彼女とちょうど目が合った。
「先生せっかくだし来てくれませんか?」
「うーん…お邪魔しちゃっていいの?ごはん作るの佐藤さんでしょ?」
「いいですよ!大丈夫です」
「じゃあ遠慮なく」
「ふふふ。賑やかになるの嬉しいです」
その笑顔が本当に嬉しそうで、ふと気持ちが動きそうになる。
自分の中に直視してはいけないなにかが隠されているような気がして、慌てて目をそらした。
「クリスマスパーティとか久しぶりだなぁ」
「そうなんですか?」
「うち男兄弟だったし」
「でも大、彼女途切れたことないよな~」
「…そういうこと言うなよ…」
「お!先生モッテモテ!?」
「そうそう!優しいし頭もいいし。大学でもモテモテだったよね~。4年の時付き合ってた子、遠距離でも私がんばる!みたいな感じだったじゃない。なんで別れたの?」
「乃々はほんっとデリカシーないね!」
「えー知りたーい」
「俺だって知りたい…」
遠距離になり気が付いたら別れたことになっていた、当時の彼女。
その時のあれこれを思い出し、げんなりする。
それからはいろいろ面倒になり恋愛ごとは避けていた。
「先生、今もモテモテですよね」
「生徒は対象外です」
「由姫みたいな子でも?」
「はっ!?」
思わぬことを言われ動揺する。
なんでそこで彼女の名前が出るんだ。
っていうか俺も動揺しすぎじゃないか。
「ちょっと待て、聞き捨てならない話だな…?」
しかもなんかめんどくさい事になりそうだし。
俺を睨むな。
話を振ったのは高木妹だ。
「空貴にぃは黙ってて。ややこしくなるから。友達の妹だったら…って感じで。どう?」
「いやいや歳離れすぎ。どう?ってなになんなの」
「奈々、先生困ってるよ」
「そうだ!友達の妹なら奈々だってそうだろ?」
「ええー?例え話だよー?由姫、家事も出来るし可愛いし。性格も良いしー。」
「高木さんと違ってね」
「あっ!そーゆーこと言うー?」
「なんか遠野くんが高木さんって呼んでるの聞くとゾワゾワするわ」
「俺にどうしろっていうんだよ!」
そこからなんだかんだと呼び方の話になり、佐藤さんを由姫ちゃん、高木妹を奈々と呼ぶことになった。
「私は呼び捨てー?」
「君をちゃん付けで呼ぶのとか無理」
「私のことも呼び捨てでいいですよ…?」
「君を呼び捨てするのとか無理」
「ええー?差別じゃない?」
「違います」
学校で呼び方間違わないようにしないとな…。