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「えっ!?空貴の妹!?」
先生がバッと私の顔を見る。
「ちなみに私は高木乃々の妹でーす」
兄の知り合いならば彼の幼馴染兼彼女を知らないはずはない、と気付いた奈々が自己紹介をした。
「は!?乃々の妹!?」
先生はぎょっとした顔で奈々を見た。
「ちょっと何その顔ー」
兄と先生は高校時代の友人だった。
大学生になってたからもちょくちょくと会っていたが、卒業後先生は地元を離れ就職、兄も家の事情でゴタゴタし、連絡が途絶えていたらしい。
「連絡しなくてゴメンな」
「いや、まあ…オレもまだ周りに連絡とかしてないんだわ」
「そっか。こっち戻って来た時に迷ったんだけど。時間開きすぎてタイミング掴めなくてなー」
「気ぃ使わせたな。悪ぃな」
「お互いさまだろ。…どう?あれから落ち着いた?」
「まーなんとかなー。由姫も高校通わせられてるし」
「ならよかった。ずっと気にはなってたんだ」
「…ん。大丈夫だよ」
…たぶん、かなり親しかった、ように思う。
安堵した先生の顔が印象に残った。
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せっかくだからと少し話してくると2人でどこかへ行ってしまった。
あとで乃々ちゃんも合流するんだろう。
「由姫、先生が空貴にぃの友達だって知ってた?」
「ううん、知らない。お兄ちゃん、友達とか家に連れて来なかったし」
「ああ、そういやそんな感じだったよね。お姉ちゃんに聞いたら先生の昔の話聞けるかなぁ」
「そんなの聞いてどうすんの」
「そりゃあ、ネタになるじゃない?先生割に人気あるしー」
「もう、ほどほどにしなよー?」
「わかってるよーん」
兄と先生が友達。
なんだか不思議な縁だな、と思う。
「空貴にぃもこれで少し他の友達とかと連絡取るようになるかな?」
「んんーどうだろ。私が大人にならないと…」
「やっぱそうなのかなぁ。大人じゃないかもだけど、もういいのにね」
「そうだね…少なくとも高校卒業までは、とか思ってるんじゃない?」
「ありそう」
私達の両親は4年前事故で他界してしまった。
私を引き取ると言う親戚に、ふたりっきりになってしまったのに、由姫とも離れるなんて嫌だ、と頑なに拒否をした。
隣に住む高木家に助けられながらもふたりきりの生活がはじまった。
必然的に兄と友人との連絡は途絶えてしまう。
たまには遊びに行ってもいいよ、と言っても大丈夫としか言わない。
そこまでしなくてもいいのに。
兄には兄の時間があってもいいのに。
先生との再会が兄にとってひとつのきっかけになれば、そう思った。