その先 4
「まだ帰りたくない…」
「由姫ちゃん…」
「もっと一緒にいたい…」
先生が息を呑んだような気配を感じた。
どうしよう、やっぱり言ったらいけなかった?
あまりの恥ずかしさに俯いてしまう。
ぎゅっと握った自分の手をひたすらみつめていると、こっち見て、と先生の声が聞こえる。
恐る恐る顔を上げ横を向くとそのままキスをされた。
何回も角度を変え、深くなってくる。
甘く深いキスの余韻にぼぅっとしていると車が発進した。
「先生…?」
「あぁ…そうだ、スマホの電源切っておいて。」
「え…?」
「空貴に邪魔されたくない。」
「邪魔…?」
「まあ、そりゃあね。終わったらはいさよーならってのは嫌なので。どうせならお泊まりコースかな、と。」
「えっ!??」
「えって…。さっき自分が言ったこと忘れたの?」
チラリ、と先生の視線が私に向かう。
その瞳にある種の熱のようなものを見てしまい、慌てて視線を反らした。
「俺の理性をぶった切っといてやっぱなし、はないからね」
「そんなこと…」
「あんまり可愛い反応しないで。これでもギリギリなんだ」
口調は普段と変わらない。
けれど先生の発する空気と表情は余裕がないように思え、急に現実味を帯びてくる。
何故か焦ったような気持ちになっているうちに先生のマンションに着き、車を降りるとすぐさま手を引かれ足早に部屋に向かった。
先生が鍵を開ける音がやけに大きく聞こえ、ドアが開くとまるで攫うように中へと引き込まれた。
噛み付くようなキスをされ、壁を背に先生の腕に囲われる。
さっき車でしたような、甘いキスとは違う。
奪われるように激しく、さらに深く。
お互いの吐息しか聞こえなくなって、頭の芯が痺れてくる。
体に力が入らなくなり、ガクッと膝が抜けた。
「んんっ」
「由姫ちゃん…」
「…きゃあっ」
「つかまってて」
さっと抱き上げられるとまだ1度も入ったこのとない寝室へ入り、そのままベットへ押し倒された。
ふわっと全身が先生の香りに包まれ、カッと全身の熱が高まった。
「由姫ちゃん…本当にいいの?ってもここまできたらやめる気ないけど」
「なっ…せん、せっ」
様々な所にキスを落としながら先生は器用に私の服を乱していく。
「由姫…」
耳元で名前を呼ばれ、唇が首筋へ、そして胸元へとおちていく。
さらなる甘い刺激に、もう何も考えられなくなった。
先生の手と唇が私の素肌を滑っていく。
甘ったるい自分の吐息と、掠れた先生の声。
痛みと苦しさと、ほんの僅かな甘い疼きともに先生の熱が私の中を突き上げていった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
スマホに電源を入れる。
タイミングがいいのか悪いのか、すぐさま着信があった。
「…もしもし。」
「あ?大?お前らどこにいんの?門限過ぎてるぞ。」
「…由姫?寝てるけど」
「お前…」
「彼女なんだからいーでしょ」
「未成年だ!!」
「わかってるよそんなの。でも俺の理性ぶっ壊しにかかってくるんだから。無理だよ」
「なっ!?」
「今日は帰さないから。じゃあね。」
「大っ!!」
容赦なく電源も切ってしまう。
寝室に戻りベットで寝ている由姫ちゃんの顔を覗き込んだ。
すぅすぅと寝ている姿は少しだけあどけない。
数十分前の彼女を思い出し、再び体が熱くなってくる。
頭を振って気持ちを落ち着かせ隣に潜り込み体を引き寄せる。
「うぅん…?」
「ごめん、起こしちゃった?」
「ふぇっ!?」
「…体は大丈夫?痛くない?」
「なっえっあっ」
あまりの混乱ぶりに思わず笑いが込み上げる。
耳元に口を寄せ囁く。
「ねぇ、由姫。好きだよ」
「…っ!!」
ビクッと肩を揺らしさらに赤くなった由姫ちゃんが涙目で睨む。
「ふふふ。可愛いなぁ」
「やだ、もう!せんせいっ!」
ひたすら甘い夜が更けていった。




