その先2
「あぁぁ!由姫の馬鹿!それじゃダメ!」
「えぇ…?」
「そこはだったら泊まりに行ってもいいですか、とか先生の家でゆっくりしたいな、とかって言わなきゃ!」
「そんなの言えないよっ!」
「いや、今からでも間に合う!さあ電話!」
「むりむりむりっ!!」
ぐるぐると悩んだ挙句奈々に相談するも、彼女の指南は私にはハードルが高い。
おおよそ私には出来そうもないことばかりを言ってくる。
「んー。せんせーマジで成人待ってる説…?」
「そうかなぁ…」
「由姫は?せんせーとそうなりたい?」
「…うん…」
兄がだいたい一緒にいるという環境的に仕方ないとはいえ、大人なキスもまだ数えるほどしかしていない。
前にキスをした時のことを思い出し、勝手に体が熱くなってしまう。
「あ!じゃあ、これなら言える?」
「…なに?」
「私まだ帰りたくない」
「…っ!!」
「これなら1発で落ちそうなんだけどなー。せんせー由姫に弱いし」
「なっ」
「もともと出かけるなら遠出になるんでしょ?門限…いつまで守ってるんだかって感じだけどギリギリに帰ってくることになるし後がないとこで攻める、どうよ」
「どうよって…」
「でもさ、由姫だって思ってるんでしょ?いつも週末にさ。まだ帰ってほしくない、とか」
図星すぎて何も言えない。
そうだ。
言いたくても言えない、いつも喉元まで出かかる言葉。
「やるやらないは別にして…」
「言い方っ!」
「ごめんごめん…まあ、ほんとの気持ちでしょ、素直に言ってみたら?」
「…うん…」
「まあ由姫が心配してるようなことはないと思うよー?」
「うん?」
「私じゃそんな気にならないのかも、とか?」
「なななんでっ!?」
私の心を見たかのような言葉にぎょっとする。
由姫はわかりやすいよー?という奈々の顔はニヤついている。
…なんか、すごくくやしい。
「安心しなよ。間違いなくめっちゃそういう対象で見てるね」
「ちょ!」
「大人だしこう言ったらなんだけど経験もあるんだろうし。セーブかけてるだけでしょ」
「我慢してるってこと?」
「うーん…ちょっと違うかな。もちろん我慢もしてるだろうけど。時期をみてるんじゃないかなぁ」
「時期…」
「由姫がそういう素振りを見せたら意外とすぐ食いつくと思うよ?」
「ええ!?」
「どうせなら思いっきり食いついて貰いたくない?」
「そ、んなのっ」
「服は任せてよ。少し大人っぽくしてさー悩殺?みたいな。よし、おねーちゃんにも相談しよ!」
「いやいやいや」
「えー?いいじゃん。出かけないでそのまま家に連れ込んで貰うのも手だよ?」
「奈々っ!!」
さすがにあけすけすぎる。
でも先生がそんなふうになるなんて想像もつかない。
悩殺なんたらはもってのほかだけど、せっかくだから可愛いくらいは思われたい。
よし、と気合いを入れ、すでにあれこれ選び始めている奈々に合流したのだった。




