エピローグ
「お前らふたりっきりで、とかないの?」
「何が?」
「いや…毎週末家に来るからさ」
「由姫ちゃんお前の飯のこと気にするし。俺今年も担任持って忙しいしさ。土日も会えないときあるから夜だけでもここ来れば会えるじゃん」
付き合い始めて3ヶ月。
年度始めと新生活でふたりともバタバタしていて、最近ようやく落ち着いてきた所だった。
難しい顔をしながら空貴が唸る。
「え、何。俺ん家連れ込んでいいの?」
「ダメだ!!」
「ほらそうなるじゃんか」
「うっ」
昼間会える時はちゃんとふたりだけで会ってるし。
夜ふたりきりになったら自分を止められる気がしない。
付き合ってるんだからいいとは思うけど、でもさすがにまだ早いんじゃないだろうか。
「もう少し落ち着いたらなー」
「…落ち着いたらどうすんだ」
「そりゃまあ…いや聞くなよ」
「ああぁぁっ」
「うるさいな」
「俺は認めない…せめて成人するまでは…!」
「いやそれ普通に無理」
「お兄ちゃんうるさい」
「由姫!」
これ以上は彼女の兄にする話ではないよな、と思ったところでご飯を作っていた由姫ちゃんが顔を出す。
「ご飯出来たけど…?」
「ありがとう」
お礼をいうとにこっと笑顔が返ってくる。
「ねぇ、夏休みどこ行きたいか考えておいて?」
「夏休みですか?」
「少し遠出もできるしね。なんなら泊ま」
ベシッと頭を叩かれる。
「痛いよおにいちゃん」
「おにいちゃん言うなってんだろうが!」
「門限はいつ解除?」
「まだまだだっ!!」
早くメシっ!と自ら用意を始める空貴を横目にため息をつく。
「明日にでも破ってやろうか」
「なっ!?」
真っ赤になって動揺する由姫ちゃんに冗談だよ、と声をかけて自分も用意を始める。
毎日会えるわけじゃないけど。
気持ちを誰にも知られてはいけない、隠さなければならない恋じゃないことに幸せを噛み締めた。




