27
今日は先生の誕生日。
たぶん…たぶん、今の私なら電話をしてもいいはずだ。
「よし!」
気合いをいれて先生の電話番号を呼び出し、コールする。
ドキドキしながら待っていると、慌てたような声が聞こえた。
『もっもしもしっ!?』
「先生?」
『ゆっ由姫ちゃん?なにどうしたの?』
「えっと…誕生日おめでとうございます」
『えっ!?』
「忘れてましたか…?」
『や、忘れてたわけじゃないけど…予想外で…』
「予想外?」
『由姫ちゃんに言って貰えるとは思わなくて…』
「そう…ですか?」
『ん…。なんか、照れるね…嬉しい…ありがとう』
「あっいいえっ」
電話越しに届く声がくすぐったい。
ぎこちなさはだんだんと薄れ、前と同じような雰囲気になりつつあった。
『由姫ちゃんが学校にいないと思うとさみしいよ』
「なっ!えっ?」
『そんなに驚かなくても』
「え、だって!」
『…ごめんね』
「なっなにがですかっ?」
『中途半端で…あと、もう少しだけ待ってて』
「…はい」
今日あったこととか、少しだけ話をして電話を切る。
ぽふっとベットに突っ伏した。
なんかもう…無性に叫びたい。
※※※※※※※※※※※※※※※
そわそわとした気分で半月が過ぎ、とうとう3月が終わる日。
「いよいよ明日だねぇ」
「うん…」
「夕方だっけ?」
「うん…」
「ゆーき?」
「緊張する…」
「まあ悪いようにはなんないでしょ」
「そっそうかな?そうだよね?」
「そうじゃなかったら私が許さん」
地を這うような声で奈々が言う。
これで悪いようになったら血を見るんじゃないだろうか。
夕飯後には奈々も帰ってしまい、じりじりと時間が過ぎるのを待つ。
寝ちゃおうかな、というところで兄が帰宅する。
「お帰り。遅かったね」
「ただいま。あーまあちょっと色々な…」
「どうしたの?」
「いや…。由姫、今日夜更かししろよ」
「は?」
「そうだな…出来れば日付が変わる頃?」
「なにそれ」
「おにいちゃんの言うとおりにしておけー」
「理由くらい言ってよ」
「駄目」
理由を教えてくれないうえにつまみを作れだなんだと珍しく無理を言ってくる。
あれこれと付き合っているうちにもうすぐ日付も変わる頃になってしまった。
「おし、いい頃合いだな。んじゃ、部屋へ行け」
「もーなんなの?」
「いーからいーから」
「良くない!」
「なんかなってるぞー?」
「えぇ?」
少し離れた所に置いてあったスマホが確かに鳴っていた。
画面を見ると先生からの着信だった。
あわてておやすみを言ってから自分の部屋へ行く。
「もっもしもし!」
『…ごめん、寝てた?』
「いっいえ…ちょっとおにいちゃんが…」
『空貴が?』
「なんかわがままで…?」
『そっか』
笑った先生の声がいつもと違う気がした。
「先生…?」
『あのさ、ベランダ、出れる?』
「…え?」




