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秘密の恋  作者: 菊花
本編
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26




まだちゃんと伝えることができないのがもどかしい。

でも、なんの憂いもなく確実に手に入れるためなら。




「…もしもし由姫ちゃん?」

『はい…由姫です…』

「今、大丈夫?」

『はい…』


電話越しに聞こえる声は緊張しているようで。

なんとなく、自分もガチガチになっていた。

こういうのは久しぶりで、落ち着かない。



「えーと…」

『あの…?』

「ごめん、俺ちょっと浮かれてるかもしんない」

『先生が?』

「うん」

『どうして…』

「分かんない?」

『そうゆうのずるいです』

「あはは、そうだね」


ぎこちない会話の後、沈黙が落ちる。


「…あのさ」

『はい』

「4月1日、会えない?」

『1日…ですか?』

「そう。学校行かなきゃだから、夕方とかになっちゃうんだけど」

『…分かりました』

「迎えに行くね」

『はい…』

「じゃあ、また、おやすみ」

『おやすみなさい』



電話を切って、ソファに突っ伏す。

これは…ダメだ、自分がヘタレすぎてやばい。

ロクに話せないとか中学生か。


「あーもう!」


大丈夫か、俺。




※※※※※※※※※※※※※





「おもしろくねーな」

「…分かるよ」

「一途だよなぁ。1度は振られてるんだぜ?」

「うん。そうだね」

「それなのに相手は待ってろとか言って返事を保留とか?え?何様?」

「ほんとすみません」



卒業式のあったその週末。

前触れもなく空貴が家にやってきた。

覚悟はしていた、が。


「お前俺の事応援してくれてんじゃなかったの」

「それとこれは別だっ!」

「マジか」

「10も歳上のしかも教師とか」

「…同じ歳の男だったって文句言うだろ」

「あ?」

「イイエナンデモ」

「いいか、門限作るからな?厳守だからな!」

「おにいちゃん横暴ー」

「おにいちゃん言うな!」


そしていかに「うちの由姫」が「可愛い」かを語っていく。

そういえば、昔も「妹」の話をよく聞かされていた。

あの頃はさして興味もなく聞き流していたけど、今思えば惜しい気もする。


「なぁ、おにいちゃん」

「おにいちゃん言うな!」

「俺、大事にするから。今まで傷つけちゃった分も」

「…当然だろ」

「だから、俺の事認めてよ」


ギロリ、と胡乱な目を向けられる。


「…ちっ」

「なに」

「お前なんか振られちまえ」

「それでも親友か」

「親友だと思ってたやつに裏切られた」

「ずいぶんだなぁ」

「泣かしたら末代まで祟ってやる」

「こわ」


今日泊まって行くからな!電話とかさせねー!!と言い放ちながら妹自慢に戻っていく。


「…なぁ空貴、頼みがあるんだけど」

「あ?」

「凄むなよ」

「ついな、で?」





会いたい、声が聞きたい。

早く、気持ちを伝えたい。






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