24
綺麗に晴れ上がった日。
「3年ってあっという間だねぇ」
「うん…奈々とは初めて別々だね」
「家は隣だもん。いつでも会えるじゃん」
「でもさみしいな」
「やだ由姫っ!そういうの駄目!泣いちゃうじゃん!」
「あははは」
先生に会えるのも、今日で最後。
今日で、本当に私の恋は終わる。
朝礼で花を付けても、式の間も。
なぜだか、卒業するという実感が乏しい。
ただ、先生だけは目に焼き付けたくて、ずっと視線で追いかけていた。
最後のホームルームで先生から卒業証書を受け取る。
目を合わせると少しだけ笑ってくれた。
全員が受け取り、いよいよ最後の挨拶になる。
「卒業おめでとう」
大好きな、先生の声。
これも、最後。
「これから、君たちは大人になるための1歩を歩き出す。この3年間で得た経験を存分に活かしてください。ここで得た友人は一生の友人でもあります。もし迷うことがあったなら、存分に頼って。歩き出す道はそれぞれだけど、君たちのこの先の未来が、幸せに満ち溢れ、光り輝くことを願います。」
ちらほらと泣いている子が出てくる。
「初めての担任を持つことになって、慣れなくて最初は随分迷惑をかけたと思う。たくさん助けてくれてありがとう。このクラスの担任が出来てよかったよ。」
先生がクラス全体を見回した。
「最後は笑顔でね。じゃあ、最後の挨拶ー」
きりーつれーい さようなら、の掛け声と同時に先生の上に紙吹雪が舞う。
「うわっ!?なにこれー!?」
奈々が花束を持って先生の前に立ち、みんなでせーので声を揃えた。
「先生ありがとうございましたっ!」
「サプライズー!?」
「びっくりしたー?」
「やめろー!泣いちゃうじゃんかー!」
「泣かせるためにやってるんじゃーん」
ひと通り騒ぎ、キリないから終わりなーと先生が言った。
「派手にやったなぁ。ちゃんと片付けて帰れよー?」
花束を抱え、先生が出ていく。
廊下に出た瞬間、他のクラスの生徒に掴まっている様子を見てしまった。
「人気者だねー」
「わっ!奈々!」
「まずは片付けするか」
「成功したけど、これはめんどーだね」
苦笑いしながらもさっさと片付け、バラバラと解散していくなか、奈々が意味ありげに私を見る。
「由姫、どうするの?」
「…帰るよ?」
「行かないの」
「…先生の迷惑になりたくない」
「本当にいいの?」
奈々に答えずに教室を出る。
ふたりともなんとなく無言で下駄箱に向かう。
まだちらほらと生徒が残っている中、外へ出てふと振り返って校舎を見上げた。
窓に、先生の姿が見えた。
目が合い、微かに笑った。
このまま…先生に会えなくなる?
本当に、このまま帰っていいの?
きちんと伝えなくていいの──?