22
先生にそっち行くように言ったからよろしくね
奈々からのLINEに書かれていた内容に思わずぎょっとする。
なんでまたそんなことを。
ぽつぽつとぎこちない会話をしながら、そういえば、と隣に立つ先生を横目で見上げる。
告白をしてしまってから感じるようになったピリピリとした空気が、最近は無くなったように思う。
以前と同じような、穏やかな空気。
私の気持ちの変化?
それとも先生に何かあった?
断続的に来るお客さんの中には先生に見惚れている女の子もちらほらといた。
…先生、かっこいいもんね。
普段はそのままの髪がかきあげられ妙な色気が出ていた。
それが、あのクリスマスのときの寝起きの先生の雰囲気にも、似ていて。
かぁっと顔が熱くなる。
暗くて良かった。
ドキドキして落ち着かない…。
「…勉強、進んでる?」
「あ、はい」
「そっか…あのさ、」
「交代の時間だよー」
先生が何かを言いかけた所で声がかかる。
「おっ、良かった交代ね。何も聞かされずに来たからないのかと思った」
「先生似合うねー!まだいてくれてもいいよー?」
「やだよ」
「由姫もおつかれー」
「うん」
頭にぽん、と手が乗った。
咄嗟に見上げると先生がお疲れさま、と笑いながら通り過ぎていく。
「…先生のばか」
真っ赤になった私は、しばらくその場から動くことが出来なかった。
※※※※※※※※※※※※※※※※
あっという間にどこもかしこも勉強一色になる。
奈々でさえ少しピリピリとし始めた12月。
「クリスマスくらい息抜きしなさいな」
「そうは言うけど…」
「由姫も奈々も合格ラインじゃない。油断はダメだけど休まないともたないわよ?」
「はあい~」
今日は終業式だった。
これで新学期まで先生に会えない。
しかも冬休みは補講がない。
そして3学期はテストが終われば登校日以外は授業がないから、卒業まで先生と会えるのはもう数えるほどしか無かった。
「先生に会いたいなぁ…」
ふと視線を感じて目を上げると驚いた顔の奈々が私を見ている。
あれ、もしかして。
「私、声に出てた…?」
「おもいっきり」
「やだ…!!」
「かーわいーねぇ」
「乃々ちゃん!!」
恥ずかしい。
カーっと顔が赤くなっていく。
こんなこと口に出しちゃうなんて!
「ねぇ、由姫。そのまま、その気持ち大事にしててね」
「乃々ちゃん?」
「私から、お願い。そのうち、わかるから」
「うん…?」
先生に会いたい気持ちをってこと?
それとも先生を好きってこと…?
分かるようで分からなくて。
ただ困ったように乃々ちゃんを見ることしかできなかった。




