表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘密の恋  作者: 菊花
本編
20/38

18




先生と微妙な距離を保ちながら日々が過ぎてゆく。

少しでも踏み外せば何かが崩れてしまう。

綱渡りでもしているような気分だった。



「担任ってことはあれだよね。成績とかバレバレなわけだよね」

「奈々、嫌なこと言わないで」

「想像するだけでゾッとするなぁ」

「奈々ぁ」

「ごめんごめん。でもそんなに怯えるほどの成績でもないでしょ?」

「それとこれとは話が別だよっ」


ねえ、と奈々が切り出した。


「由姫はさ…。先生の事まだ好き?」

「…早く忘れられたらいいのに」

「好きなんだ」

「ん…。毎日顔を合わせる状況って複雑」



毎朝、おはようと教室に入ってくる姿。

クラスの子と話している時の笑顔。

授業中の真剣な横顔。

目が先生を追ってしまう。



私には片想いを楽しむ余裕はなく、ただただ先生への思いが募るばかりだった。




※※※※※※※※※※※※※※※




空が高くなりあっという間に夏が来る。

季節が移り変わっても私の心は相変わらず先生を追いかけていた。




「佐藤さん、ちょっといい?」


図書室へ向かう途中に声をかけられた。

去年同じクラスだった男子。

それほど話したこともなかったような気がしたけどなんだろう…。


「図書当番があるから…」

「すぐっ!すぐ終わるからっ」

「わかった…なに?」

「俺、佐藤さんのこと好きなんだ。」

「えっ」


意を決して、という素振りではあったけどまさか…。


「もしかして彼氏とかいる…?」

「いないけど…」

「じゃあっじゃあさ、付き合ってよ!」

「ごっごめんなさい…」

「え、なんで?彼氏いないんでしょ?だったらいいじゃん」

「でも…」


逃げ腰の私に気付いたのかさっと手首を掴まれた。


「やっ!離してっ」


途端に悪寒が走り手を振り払う。

顔を見ると明らかに怒った顔をしていた。

…どうしよう、こわい…。


また手を掴まれそうになった瞬間。


「どうした?」


聞き慣れた声にハッと振り向く。


「何やってるの。喧嘩?」

「ちっ違います」

「そう?佐藤さん、当番じゃなかった?遅れるよ。時間厳守でしょ」

「あっはい、すみません。すぐ行きます!」

「あ!待ってよ!」

「ごめんなさいっ!!」


ばっと走り出す。

後ろから、せんせー邪魔しないでよーという声が聞こえる。

そのあとに続く茶化したような先生の声。




どうしよう、どうしよう!

どこから先生に見られていたんだろう!

その事に酷く動揺する。


掴まれた手首に残る手の感触を消したくて思い切りこすった。

嫌だ、気持ち悪い。

先生に触れられた時はこんなことなかった。



あの時近かった先生との距離は今はもう遠くて。

自然と涙が溢れた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ